平助の母親
□61.
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☆★誠自動車の社長、誰だと思います?★☆
その後「急いで急いで」と大慌ての山南部長の車に乗り込んで、車はどんどん街の中央へ、繁華街をぬけて国際ホテルへと到着した。
「さ、社長がお待ちですよ」
広いエントランスを横切り大きなエレベーターに乗り込むと行き先はスカイラウンジよりも上にある最上階へ。
そんな一般ピープルのわたしが足を踏み入れることすら憚れる世界へと山南部長の笑顔によって誘われる。
「失礼します」
山南部長が穏やかな声と共に部屋の扉を開けると奥で私たちを待っていたのは………。
「やぁやぁ!遅いじゃないかぁ!」
「こっ!?」
「こ?」
わたしの後ろから上半身を伸ばしてわたしの視線を辿る原田さん。
椅子から立ち上がってこちらに向かって駆け寄ってくる大きな人影を見ると、目を丸くして驚き声をあげる。
「こっ…、近藤さん!なんで???」
はっはっはと、笑いながら原田さんに笑いかけて
「まぁまぁ、詳しい話は後でな。ほら松平社長がお待ちかねだよ」
わたしの背中に大きな手をまわすと、さぁさぁ中へと押し進められる。
「あ、は…、はぃ」
そのまま奥の部屋へと足を踏み入れると、そこには大きなテーブルに用意された色とりどりの豪華なお料理。
夕飯時を過ぎた今のわたしのお腹のむしが騒ぎ出す。
よほど目の前に広がるお料理を凝視していたのか、テーブルの一番奥の椅子に歩み寄って手をかける人物がくすくすと笑い声を上げた。
「そんなに目を輝かせて…。よほど腹が減っているのだな。掛けなさい。」
ハッとしてそちらを見れば優しげに微笑む男性。
「は!…すっ!すみませんっ!!」
慌てて頭を下げて謝れば、またくすくすと笑う男性。
「ほら、顔をあげなさい。……あなたが苗字さん、ですね…」
その優しい声に言われるままそっと顔を上げれば声と同様、優しげな眼差しがまっすぐわたしを見つめていた。
「苗字さん、松平社長ですよ」
近藤さまの後ろから山南部長が教えてくれる。
「あ…!は、初めまして、苗字名前です!」
慌てて頭を下げて名乗ると
「ハハッ、また頭を下げて…。いいから顔をあげなさい」
またまた優しく笑われてしまった…。