平助の母親
□59.
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「…………。」
へいしゅけ………。
ツーツー言ってるケータイを持ったまま立ち尽くすわたし………。
ていうか。
わたしまだこの件に関してなんにも言ってないのにもういいって……。
わたしのこのやり場のない気持ちはどぉーしたらいいのぅ!!
何なの?この放置プレイ的な感じ!
ソーデスカソーデスカ。
千鶴ちゃんがいればもーどーだっていーーんだ。
ふんだふんだふーーーーんだっ!
携帯をバッグにしまってロッカーをバタンと閉める。
……………。
わかってるつもりだって……。
当事者のわたしがこの先どうしたらいいのかわからないでいるのに、わかってるだなんて…。
じゃあ教えてよ。
この先、としくんと平助とそれから千鶴ちゃんと…。
どういう付き合いかたをしてけばいいのか。
平助はとしくんに結婚の事聞いてたけど…。
わたしはまだそんな事、考えられないよ…。
それに結婚なんて………
そんなに簡単な事じゃないんだよ………。
14年前に本人同士じゃどうにもならなかった事がずっしりと胸の奥に淀みを作って、沈みきっていた底の方から揺らめくように記憶の泉を浮上する。
わたしの記憶からどうしたって消し去ることなんてできない過去の事実。
いくらその記憶が少しずつ薄れていったとしても、ふとした瞬間に、あっという間にくっきりと、鮮明にわたしの脳裏に蘇るんだ。
一度刻まれた記憶は何があっても消えないから…。
藤堂さんとの記憶は、
きっとこの先もずっと、
わたしの中に留まり続ける…。
Next→60.鋭い!けど違います。