平助の母親

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日曜日、晴天とあって今日のショールームは午前中の来場客はそれほど多くはなくて、あらかじめ車検や点検入庫の予定のあったお客様や新車を納車するお客様のセレモニーくらいで、言うほど忙しくはなかったけれどお昼時を過ぎた昼下がり、

お出掛け帰りに新車でも見ていこうか

なんて気軽に来場してくれる新規のお客様が増えて、試乗待ちのお客様やキッズスペースで遊ぶお子様への気配りをしていたところ……。



キッズスペースでお子さまに絵本の読み聞かせで捕まっていた私を原田さんが呼びに来て、「ちょっとゴメンね」とお子さまたちを後にして連れていかれたのは私たちスタッフが休憩スペースに使っているロッカールーム。

原田さんが扉を開けると中には日曜日だというのにまたまた本社からやって来た営業統括部長の山南部長が右手をヒラヒラと軽く振って笑顔で椅子に座っていた。



「あ、山南部長…、おつかれさまです。日曜日なのにご出勤なんですか?」

確か本社は土日休みだったのにな…、
なんて思いながら聞くと、

「まぁ、私の休みなんてあってないようなものですからね」

笑顔で振っていた手をめがねの真ん中に持っていって、キラリと光る山南部長の丸眼鏡。


「…は、はぁ…、ご苦労様です…」

こ、コワイッス…。


「まぁ、それはさておき、お二人ともお掛けになって。」

ニッコリと立ったままの私たちを見上げて、椅子に座るように促す。


私も原田さんも、内心こんな忙しいときに何だろうという思いで視線を合わせるけれど、言われた通りに机から椅子を引いておとなしく座る。

私たちが座って山南部長へと視線を向けると、

「昨日あなた方にお話し致しました授賞式のお話なんですがね、社長がいたくお喜びになってましてねぇ…。授賞式にはまぁ普段通りの…、と言ってもそこそこのスーツ着用で構わないのですが、その後のパーティに参加する時に着ていただく衣裳を是非ともプレゼントしたいと仰ってましてね…。」

「ぱ…、パーティなんてあるんですか!?」

なんか大層な大事のような話に思わず聞き返してしまう。

「えぇ、折角関係企業の重鎮が集まる機会ですからねぇ…。授賞式に託つけた、メーカーの本来の目的…、といっても過言ではありませんよね。」

ニッコリと首を傾げて微笑む山南部長。



………、

パーティ…、

重鎮………。



な、なんか目の前くらくらする…。
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