平助の母親
□58.
1ページ/3ページ
☆★山南プレッシャー★☆
あのあと、千鶴ちゃんを家まで送って帰ってきた平助は、小声で「ただいま」と言ってキッチンでお水を飲んでから、フラフラとお風呂でシャワーを浴びて、そのまま二階に上がって行ってしまった…。
帰ってきたらきちんと向き合って話そうと思っていたのに…。
部屋へ上がったまま、二階からの音が何も聞こえないところをみると、きっとそのまま寝ちゃったんだな…。
はぁ………。
きちんと向き合って話そうと思っていたとは言え、何からどう話したらいいのか…、
さっぱり思い付かないけれど、
必ず話さなくちゃいけない時は来るんだから、しっかりしなくっちゃ!
気合いを入れて、昨日千鶴ちゃんが作ってくれたおかずをお弁当箱に詰め込んで、平助の朝御飯の用意も済ませたわたしは、まだ二階で眠る平助にそっと「いってきます」の挨拶をして家を出た。
昨日の夕方から降り続いた雨は、朝方にはやんで気持ちいいくらいの梅雨の晴れ間の青空で、カラっと晴れた日曜日。
こんな日はお洗濯して窓も全部開け放って掃除機かけて、お風呂場もピッカピカに磨き上げて…。
最近なかなか気がすむまですることが出来なかった家の事を思いながら電車に乗り込む。
でも、こんな日でもわたしは今日もお仕事で。
いつもなら朝からギュウギュウのすし詰め状態の電車も、ため息混じりに乗り込んだって、押し出される事もなくすんなり乗れてしまう。
空いてる席に座って周りを見渡せば、こんな時間でもどこかへ出掛けるのか、楽しそうな笑顔があっちにもこっちにも溢れてて、
スーツ姿のわたしの方が、その場にいるのが珍しい存在になっている…。
親子連れで帽子をかぶった男の子。
両脇に座るお父さんとお母さんに一生懸命何か話しててかわいいな…。
あっちの若い男の子と女の子はデートかな?
こんな早い時間から待ち合わせして、なんか初々しくて爽やか。
あの女の子は駅で待ち合わせなのかな?
一生懸命鏡を見てまつげの角度を指で上げて、なんか必死……。
いつもと違う光景を見て通勤できる日曜日。
それも今日は久しぶりのお出かけ日和だから、見ているだけの私も楽しくなってしまう。
今日はお客様もたくさん来そうだな〜!
そう思うと自然と気合いが入って、よしっ!と席から立ち上がって開いた扉からホームに降り立った。