平助の母親

□55.
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☆★思春期の雨★☆QLOOKアクセス解析





かぁちゃんが泣いた…。


こんなに泣きじゃくるかぁちゃんなんて見たことなくて呆然としてしまうとこだけど……。




「つか、としくんって!?」



としくんって…、としくん?




まさかの土方歳三!???


「マジかよ………」


目の前で土方先生に顔を寄せて泣きじゃくるかぁちゃんは、今まで見たこともないくらい小さくて、
そのかぁちゃんを慰める土方先生の顔も、マジかよってくらい、別人じゃねぇのかってくらいの表情で……。


………な、なんだってんだよ…。


目の前の光景に言葉も出なくて、ただ、目も口も塞ぐことすらできないくらい見開いたままのオレの横から、耳を疑うような一言。


「………よかった……」


その呟きにハッとして千鶴の顔を見ればものすごくホッとしたような笑顔で、かぁちゃんを見つめていた。


「は…、はぁ!?なにがよかったってんだよ!?」


つい大声で叫んで、自分でも意味わかんねえくらいの勢いで立ち上がる。

オレの声でバッと土方先生から離れてべしょべしょの顔で、驚いた顔でオレを見上げるかぁちゃん。


「へ、平助くん…」

千鶴もオレを見上げて驚いている。
そんな千鶴を見下ろして、オレはまた大きな声で怒鳴ってしまう。


「なにがよかっただよ千鶴っ!?意味わかんねぇよ!!」


千鶴が言う「よかった」の意味も、目の前で隣同士くっついて座るかぁちゃんと土方先生の意味も、全然意味わかんねぇっ!!

茶碗と箸をバンッとテーブルに叩きつけて自分の部屋へと閉じ籠る。
千鶴とかぁちゃんがオレの名前を呼んだけど勢いよく部屋のドアを閉めて閉じ籠る。



意味わかんねぇ!意味わかんねぇ!意味わかんねぇよ!!



ベッドにうつ伏せて枕に顔を突っ込む。
目の前が真っ暗で、聞こえてくるのは網戸の外から聞こえるサァサァと降る梅雨の柔らかい雨の音。

ずっと空っぽだった部屋はむしっとしてて、じっとりしてて、


今のオレの胸んとこも、なんかが突っかかってるみたいに重苦しい……。



「なんだってんだよ…」



なんでかぁちゃんが土方先生にしがみついて泣いて、

なんで千鶴がホッとするのか………。



意味わかんねぇ………。


誰か教えてくれよ………。



仰向けに転がって腕を目の上に乗せて、誰もいない天井に向かって呟く。




カチャと小さな音がして、かた目だけ腕をどかして見れば暗い部屋に細く伸びる廊下からの灯り。


「平助くん…」


千鶴の小さな声にバッとまたうつ伏せに転がる。


「……、入っても、…いい?」

小さな声の問いかけに聞こえないふりして枕にぎゅっと顔を突っ込む。





真っ暗のオレの視界。






パタンと扉の閉まる音がして、また雨の音だけの真っ暗の世界。

オレだけしかいないみたいに静か過ぎて意味わかんねぇ真っ暗なだけの空間……。
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