平助の母親
□52.
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なんだか今日は千鶴のやつ、ミョ〜に張りきって晩飯の準備を夕方から始めて大量にこさえちゃってるけど…。
これってやっぱり俺が頑張っちゃったから?
予選決勝のスタメン決定したからお祝いってやつかっ!?
リビングのソファーに寝っ転がってソファーの肘掛けを枕がわりの状態で仰向けになってDSやってるフリしてるけど、オレの視線は画面を通り越してキッチンで鼻唄うたいながらニコニコ笑って料理してる千鶴にロックオン。
オレのためにご機嫌で料理してくれる千鶴を見ていると、なんだか気持ちがあったかくなるんだよな〜。
ちっちぇー頃から一緒にて、
…まぁ、他の女子と比べてかわいいとか思うこともあったけど…
最近毎日のように千鶴の料理する姿とか、宿題教えてもらってるときの肩の近さとか?
あいつ、ミョーにかわいいってゆーかなんてゆうか……………。
あ゛〜〜〜〜っ!やべぇ!
オレなんかおかしいわ!変だ変っ!
気持ちがあったかくなるどころか暑くてしゃーねぇ!!
とか思って一人で悶えてたら窓の外から聞き覚えのある特徴の車のエンジン音が家の前で止まったような…。
ソファーから降りて窓に近づいてカーテンからそっと覗いてみると、道路にはやっぱり見覚えのある車。
「げっ!」
思わず声が出てしまうと、きれいに盛りつけた大皿をテーブルに置いた千鶴が「どうしたの?」とオレの横から外を覗きこむ。
「あ、名前さん!今日も土方先生に送ってもらったんだ!」
そう言って両手を顎の前でぱちんと合わせてなんか嬉しそうだし…。
つか、そういうのもなんかかわいい…
………って!そうじゃなくてっ!
「なんで土方先生に送ってもらってんだよ!?なんか最近そういうの多くないか?」
個人懇談が終わってから2ヶ月もたってねぇのに、土方先生、やたらうちにくること多くねぇか?
一年ときの先生なんて一回もうちに来たことなんてなかったよな?
先生なんてそうそう家に来るもんじゃねぇよなぁ!?
千鶴に問いただすような勢いで横を見ると、ついさっきまで隣にいたのにリビングの戸口まで移動したルンルンの背中が見えた。
「ちっ、千鶴!?」
「土方先生にも上がってもらっていいよね!?」
「はぁっ!?」
オレの返事も聞かずに玄関へと駆けていく千鶴にはぁっとため息をついて肩から力が抜ける。
「ったくぅ〜。なんなんだよ一体…」
もう一度ため息をついてオレも玄関へと向かった。
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