平助の母親

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俺が怪我をしてからというもの、総司は毎日朝から晩まで俺に付きっきりで世話をするようになった。

正直、最初こそ要らぬ世話だと頑なに拒み続けていたのだが、独り暮らしの俺にとって、利き腕がつかえない状況はかなり不便であり、俺が片腕一本だけではできないことを総司なりに気を使って手助けしてくれるので助かっていたのは事実だし、腕も安静にしていられる分怪我の回復も順調だ。


今日は病院でつけてもらっていた固定板をはずしてもらい、今後はサポーターでの保護で過ごせる許可をもらった。

二週間ほどの固定期間、全く動かすことのなかった左の手首が、今は多少の痛みはあれど軽く動かせるようになり、もう総司の御守りも今日で終りにしてもらおうか…。


そんな事を頭の片隅で思いながら、病院帰りに寄った図書館で試験勉強を済ませ、駅から自宅へと歩いていると、それまで俺にひっきりなしに話しかけていた総司が何かを見つけたらしく突然走り出した。


「!?総司!?」


俺の呼び掛けなど全く聞く耳持たず例の…、
名前さんが勤める輸入車のショールームへと入っていってしまった。




俺がショールームの中へ足を踏み入れると既に総司は入り口から正面にある受付カウンターに座る名前さんの元ではしゃいでおり、俺に早くこちらへ来いと呼ぶ。
俺が入り口で立っていることにより、自動ドアが開いては閉じてしまうためであったが…、

………。
いくら遠慮していたとはいえ俺としたことが…。




総司に招かれるままに名前さんの座るカウンターに寄っていくと店の奥から大きな声が総司の名を呼ぶ。

見ればそこには近藤先生と土方先生がおり、あっという間に俺の目の前で繰り広げられる総司と土方先生のやり取り。


その様子におろおろする名前さんから向けられる視線に、こればかりは俺にもどうすることもできない故、名前さんには申し訳ないが、俺には目を閉じ首を横に振ることしかできなかった。


そんな俺に少々時の止まったような名前さんだったが、小さく息を吐くと仕方ない、といった表情で俺の方へ近付き、


「はじめくん、手の具合はどう?」

と今の状況を全く無視した会話を始めた。


この二人の攻防戦が始まれば、俺とて同じようにその場から退避するであろう。
賢明な名前さんの判断に、俺も名前さんに促されるようにもうひとつのカウンター席に移動して名前さんとの会話を始めた。
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