平助の母親

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☆★誠の名のもと集いし者達★☆QLOOKアクセス解析





季節も徐々に移り変わりを見せ始めた六月の土曜日。

いつもの週末と変わらずお客様でいっぱいのショールームで、わたしも営業さんに負けず劣らず、あっちへお茶だし、こっちでお客様とお話ししたり、商談中のお客様のお子様とキッズコーナーで遊んだり…。

そんなこんなでやっと遅めのお昼ごはん。
ロッカールームでお弁当を広げて食べ始めると、鞄の中からケータイが震える音が聞こえる。


「!!」


ケータイを見れば、それは千鶴ちゃんからのメールで、平助のインターハイ地区予選の結果報告の内容だった。



千鶴ちゃんの報告によると、補欠で参加した平助も、後半から選手交替で参加させてもらって、見事平助のチームは勝利を修めて地区代表決定戦まで駒を進めたとのこと。

平助の小柄な体格を活かしたプレイで大活躍だった事が、千鶴ちゃんのメールから嬉々として伝わってきてわたしまで嬉しくなってしまう!

しかも次回の代表決定戦には、今回の活躍を評価されてスタメン出場!


「すごいっ!すごいよへーすけっ!」

思わずケータイを抱き締めて呟くと



「平助がどうしたって?」

ロッカールームの扉が開いて背後から声をかけられた。

「わっ!は、原田さん…」
びっくりしました…、とこたえれば原田さんはコンビニの袋を軽く持ち上げて

「俺も昼飯」
とわたしの向かい側に腰かける。



「ショールーム、もういいんですか?」
「あぁ、ピークは引いたかな。」

ガサゴソ袋からコンビニのお弁当を出しながら、割り箸を口にくわえて片手でぱちんと割っている。



そんな原田さんを笑って見ていると
「で?平助が何したんだって?」

とハンバーグにお箸を付けながら訪ねられる。

「あ、はい!平助がね、今日部活の地区予選に出場してたんですけど、大活躍だったって千鶴ちゃんからメールが来てたんです!」
「そりゃぁすごいな」

ハンバーグを頬張りながら相槌を打ってくれる原田さん。

「はい!それでね、今日は補欠で途中出場だったんですけど、次の代表決定戦はスタメン出場なんですって!ほんとにすごいっ!」

一人で興奮してケータイを抱き締めているとフッと笑ってわたしを見ている原田さんが口を開いた。


「よっぽどだな」


優しげな眼差しで一言呟く原田さんになんだか嬉しい気持ちが止まらなくなってしまって、

「はい!」

答えるとまたまた背後の扉が開いて誰かが入ってきた。


「あれ?山南部長」
「?」


原田さんがわたしの頭上を通り越して背後の人に視線を向けるから、わたしも振り向いて見上げると、そこには面接以来会うことのなかった営業統括部長の山南部長が優しい笑みを湛えて立っていた。



「山南部長、珍しいっすね。ショールームに来るなんて」

原田さんがお箸をおいて椅子から立ち上がろうとすると

「あぁ、いいですよ、そのまま食事を続けてください。」

とこれまた優しい口調で原田さんの動きを制して向い合わせで座るわたしと原田さんの横の席に腰かける。



「今日はですね、実はあなた方お二人にお話があって来たのですが、丁度お二人が揃ってて良かった」

にこっとわたしたち二人に順に首を傾げて微笑みかける。

山南部長、
面接の時も思ってたけれど、
その優しげな微笑みが崩れることがない分、次に何を言われるのかわからなくてこわい…。

そんなことを思いながらわたしもうっすら笑みを作っていると

「実はですね…」



………。

……………。

…………………。




な、何故溜める…?


この溜め、面接の時も本気で怖かったんだよぉ……
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