平助の母親

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その後、名前の指示のもと全員で手分けをして苗字家秘伝というお好み焼きを作り上げ子供たちから順に食べさせていく。
平助と千鶴はソファーの前に座ってローテーブルでテレビを見ながら。

俺たちは名前が腕まくりをしてホットプレートで楽しそうに焼き上げる様子を目の前に。


「はい、おまちどおさま!」

パパっと皿に乗せたお好み焼きを目の前に置かれる。

「い、…いただきます…」
「召し上がれ!」


箸を持った手を合わせる。
斎藤も総司も同じように手を合わせる。

そんな俺たちに、にこにこ微笑みを向けながら、次のタネをホットプレートに流し込む。


「って!一くん、左利きなの!?」


依然ぐるぐる巻きの手首の斎藤、
その手には使いずらそうに握られた箸。

「利き手が使えないなんて…。困ったね…」
「い、いえ、…なんとかなりますから…」


そう言って箸を握るがその手には力が入らないのか弱々しく、箸の先でお好み焼きを小さく切り分けようとすると手首に激痛が走ったのか、息を飲み、顔をしかめる。


「っ!」
「だ、大丈夫!?ダメダメ!もぉ、貸してっ!」

斎藤の皿をふんだくり椅子に座り一口サイズに切り分ける。



「はい、口開けて」
「え…」
「えぇ!?」
「っ!?」


三人揃って名前の行動に目を丸くする。

「?」

目を見開いて硬直する斎藤の表情を首を傾げて「一くん?」と覗きこむしぐさの名前に、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。


「ちょ、名前ちゃん!そんなに甘やかさなくても大丈夫でしょ!ほら、一くんも、これなら右手でも食べられるでしょ!?」


名前の手から一口サイズに切り分けられた斎藤のお好み焼きを奪い斎藤の前に勢いよく置く。

総司の勢いでハッと我に還った斎藤は一つ咳払いをして「…すまない」と平常心を取り戻し右手に箸を持ち直した。




「…でも、利き手怪我しちゃって…ほんとに大変だね…」


斎藤のおぼつかない右手の箸使いを見てぽつりと呟く。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。こう見えても一くん、なんでもそつなくこなすタイプだから」
「そうかなぁ…」


自分の事でもないのに心配するなと平然と言う総司と、
自分の子供の事を心配するような名前。


「お、俺はほんとに平気ですから…」


平気と言いつつ右手で持つ箸はなかなかお好み焼きをつかむことができずにいる。


「…………っ」
「…………。」
「…………。フォーク、持ってくるね」

ゴメンね、最初から持ってきてあげたらよかったね。と眉を下げてキッチンへと席を立つ。



「……………。」
「………、一くん、わざとじゃないよね?」
「なっ!バカなことを言うな!オレは…!」
「おい、お前ら騒ぐんじゃねぇ!」




そんな俺たちをテレビを見ながら呆れた顔して見ていた二人に俺たちが気付くことはなかった…。
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