平助の母親
□45.
1ページ/3ページ
☆★総司くん降臨。そして被害者は…★☆
「うわぁ、土方さんの車、狭いな〜。ほんとにコレ五人乗りなんですか?」
勝手に乗り込んできやがったくせに文句ばっかりの総司。くそっ!
「うるっせーぞ総司っ!文句があるやつぁ今すぐ降りろっ!大体のテメーの図体がでかすぎんだ!でかいくせにまん中座ってんじゃねぇよ!後ろが何も見えねぇだろーが!!」
バックミラーを見れば総司の顔しか写ってねぇ!腹が立つ!
やいのやいの言いながらふざけた顔の総司以外、押し黙るようにひきつって座っているだけの千鶴と平助。
斎藤は何が珍しいのかずっと黙って俺の車の内装を視線だけで見回しているようだ。
ここ最近、寄せることの少なくなった眉間のシワがくっきり蘇る。
くそっ!
今日は名前に電話して癒してもらうしかねぇな!
俺の久々の鬼オーラに怯える助手席に座る千鶴とその後ろの平助。
しばらく続く総司の無駄口。
そろそろ名前の家の近くまで来たところで、ターゲットが俺から平助にロックオンされる。
「ねえねぇ平助くん。君んち名前さんってお姉さんいるよね?」
「!?」
総司の口からたった今想っていた名前の名が出たことに驚き息を飲む。
そんな俺に気が付いたのか、千鶴が俺の顔をそっと覗くような素振りが視界の隅に写る。
「はぁ!?」
「いるよね?だってさっきこの子が名前ちゃんのこと話してるの聞こえちゃったし。それに君にそっくりなんだよね」
「平助」
なんで総司が名前を知っているのか気にはなったが、これ以上総司に名前の話題を続けてられるのは無性に嫌な予感しかしなくて口を挟む。
「ここでいいだろ?あとは歩いて行け」
ちょうど赤信号で停車したところで二人に降りるように言うと、慌てて二人ともドアを開ける。
そこに前方に停車したバスから降りる乗客の中にタイミング悪く名前が降りてきて俺の車を見つけると、車から降りる二人に駆け寄り二人の名前を呼ぶ。
「平助!千鶴ちゃん!」
「名前ちゃん!!」
「えぇっ!?ウソなんで沖田くん!?」
ドアの前に立つ平助を押し退けて総司まで車を降りやがった!?
「おいこら総司っ!」
運転席から叫ぶが全く意味がねぇ。
「おい、斎藤っ!総司を戻せっ!」
「は、はい!総司!戻れ!」
斎藤が運転席側から助手席側の後部座席に移動して総司の背中に手を伸ばすとバタンと勢いよく閉じられるドア。
「っ!?」
「だ、大丈夫か斎藤っ!?」
斎藤の利き手である左手がドアに挟まったのかとヒヤリとして思わずシートベルトを外して振り向く。
「だ、大丈夫です。ぶつけただけです。」
左手首を押さえるように右手で握る斎藤の顔は、いつもの無表情な顔ではなく少し眉を寄せている。
「大丈夫じゃねぇだろぉ…。すまない、俺が総司を戻せなんて言わなきゃぁ…」
「っ!いえっ!土方先生は悪くありません!」
そうこうしてるうちに信号が変わっていて後ろからクラクションを鳴らされる。
「くそっ!」
仕方なく左折して名前の家まで車を飛ばした。