平助の母親

□42.
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「先生、こどもの日生まれなんですね」


手を繋ぎながら、ゆっくりと月の明かりを頼りに来た道を戻る。


「毎年祝日に誕生日だから、どこ出掛けても混んでた思い出しかねぇな。近所のガキ連中で集まって騒いでた方が断然面白かった」


苦笑いを浮かべて言う先生がなんだか可愛らしくて笑ってしまう。



「………、何笑ってんだよ…」
「ふふ…、先生の小さかった頃をなんとなく想像しちゃって…」




「…………。


お前は今と、そんなに変わんねぇんだろうな」



……、何今の間。

先生、今絶対平助とわたし被せたよね………。

くぅ…。確かに見た目あんまり変化はないけど、お化粧したり髪の毛巻いたりしたら少しは大人っぽくなるし。
てかもう立派な大人だし。




「……、それで?先生はいくつになるんですか?」

先生を見上げて言うとフッと笑う。

「33になる。メモっとけ」
「えっ!?
……、てゆーかメモ…?」



先生、わたしより年下……。
てゆーか、さっきもメモしとけって言ってたけど………?


「そのうちメモがたまった頃に俺検定するからな。ちゃんと勉強しとけよ」
「えっ!?なんですかそれ!?」
「俺のこと、どれだけ理解してるか試すからな」


にやっと笑う先生の顔がイタズラを企む子供みたいで、さっき頭の中に思い浮かんだ土方少年と重なってつい顔がにやけてしまった。




「………。だから、何笑ってんだよ…」

「ふふ…、だって先生、…絶対ガキ大将だったでしょ。しかもイタズラばっかりしてそう」


くすくす笑いながら言うと


「イタズラなんてしてねぇが…、何故かいつも大人に追いかけ回されていたな、そういえば」

頭をかきながら遠い目の先生。

「やっぱりイタズラしてたんじゃないですか」


二人で肩を揺らしながら笑い会う。




楽しいな。
こうして先生のこと、どんな小さなことでもどんどん知りたくて、
先生の事ならどれだけでも吸収できるくらい脳が情報をほしがっているみたい。



「先生の事、もっともっと知りたいな」

つい声に出して呟けば

「俺だっておまえの事、もっと知りてぇよ」

先生も同じように呟く。





「で?お前は?いくつなんだよ」
「?」

先生が背を屈めて顔を近付け突然話を振ってくるから、
一体何を聞かれてるのかわからなくて首をかしげて先生を見返すと

「とぼけてんじゃねぇよ。おまえの年齢だよ。俺に歳聞いたんだからおまえの歳も教えろ」

「え……、歳、…ですか?」


わたしを見つめて頷く先生の視線にたじろいでしまう…。


「え…、えっとぉ…」

視線をさ迷わせていると先生の右手が目の前にあって、軽くでこぴんされた。

「あいたっ!」
「隠し事はなしだ。言え」


うぅ〜…。そんな怖い言い方しなくても……。


左手でおでこをさすりながら
「先生の二個上です!」
とそっぽ向いて答えると繋がった先生の手にギュッと力が入り、
「何っ!?」と大層驚かれてしまった。



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