始まりは視聴覚室

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「千鶴ちゃんは沖田総…、…沖田…先輩と知り合いなの?向こうから寄ってきてたし玉子焼き食べられてたし」



あんな失礼な人の事なんて私には関係ないしこれからだって関わるつもりもないから別に興味ないけど…、
一応友達として千鶴ちゃんとの関係を知っとくのは、ね。おかしなことじゃないよね。

本当は話題にもしたくないし名前も言いたくないけど首を傾け千鶴ちゃんの様子を伺う。

すると千鶴ちゃんもあまり言いづらいのか、私の沖田嫌いを感じてか苦笑いを浮かべて首をすくめる。



「うん…、知り合いっていうか…、部活の先輩…?剣道部の。」

「えっ!?剣道部!?千鶴ちゃん剣道するのっ!?」



アクティブ!
千鶴ちゃんアクティブ!

その可憐な佇まいからは一切想像もつかない答えに思わず前傾姿勢から身を起こす。



「あ!違うの、私はマネージャーで…」



私の大きな声と勢いに焦るように両手のひらを胸の前で振る。



「ま、マネージャーかぁ…。びっくりした」



こんな儚い乙女っこが竹刀振り回すとか…、
いや振り回したりはしないか。
いやでも…、

胴着を着て背筋をピッと伸ばす千鶴ちゃん…

いいかも!!

一人脳内で千鶴ちゃんのコスプレ大会を繰り広げてると思わぬ声を掛けられる。



「なまえも千鶴と一緒にマネージャーやってくれよ」

「っ!…はぁっ!?」



いきなり何を言いだすんだこのわんこ先輩は!
しかもまだ紹介されてから10分も経ってないのにいきなり呼び捨て!?それも下の名前を!?
びっくりするー!なんだこの馴れ馴れしさー!



「へ…平助くん、いきなりすぎるよ…」



ほらみろ!千鶴ちゃんだっていきなり何言ってんだって引いてるじゃない!



「えー?だぁって千鶴いっつも一人で大変そうじゃん?もう一人くらいマネージャーいたらちょっとは楽になんじゃねーかと思ってさ?」

「そ…、それはそうだけど。でもいきなりなまえちゃんの都合も聞かずに…」




ってそっちかい!
いきなり名前呼び捨ての方じゃなくてマネージャー勧誘の方かぃっ!

心の中で激しくツッコミ入れる私をよそに、でもでも言い合いながら仲睦まじい二人。

沖田総司と知り合いかどうかを聞いただけで何故だか話は私のマネージャー勧誘の方向へ行きつつある二人についていけず、そそくさとお弁当箱をしまって立ち上がる。



「ごめんね千鶴ちゃん。悪いけど私、放課後はいろいろ忙しくて…。マネージャーとかできないから」



「じゃ、先に戻るね」と言い残して突然立ち上がった私を見上げる二人のまん丸な眼差しに背を向ける。


剣道部のマネージャー?
冗談じゃないよ。
誰がわざわざ、あの沖田総司がいるってわかっててそんなところに入部するかってんだ。
絶対関わりたくないし!
できれば顔も見たくない!

奴の三日月型のニヤけた眼差しを振り払うように頭をブンブン振りながら教室へずんずん歩いた。
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