僕のおねえさん
□82.
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☆★総司 vs 土方 -認めない-★☆
翌日僕は炎天下の中、授業もない夏休みだというのに学校を目指して歩いていた。
駅から学校まで続く桜の木はたくさんの蝉たちを匿うようにすっかり濃い緑の葉を生い茂らせる。
蝉の大合唱が響き渡る中まっすぐ学校を目指して歩いていると僕の向かう先から一人、こっちへ向かって歩いてくる人影が見えた。
「………。」
ぼんやりとその影を見据えながらまっすぐ進む僕に向こうも気がついたのか、ふと顔を上げお互いの視線がぶつかり合う。
「……、総司」
ここで僕に会うことが意外とでも言うような声に、一瞬眉を寄せた土方さんの表情に、僕だって土方さんの顔なんか見たら条件反射で気持ちが表情に出ちゃうけど、
でも、会いに行く予定だった人物の登場に、わざわざ学校まで行く手間が省けたことを良しとして敢えての笑顔を作る。
「やぁ、土方さん。今から会いに行こうと思ってたんですよ」
立ち止まった土方さんの前まで歩み寄り、貼り付けた笑顔のまま言うと一度丸く見開いた目を細め、いつものように眉間にシワを寄せて僕を見る。
「会いにってお前なぁ…、部活はどーした。夏休み、一度も出て来てねぇらしいじゃねぇか」
ミンミンミンミンと鬱陶しいほど煩い蝉の鳴声が響き渡る中、土方さんのお小言なんて聞きたくもない。
それに、
今日は僕の聞きたいことをしっかり答えてもらわないと。
その為にわざわざこの暑い中家を出て来たんだから。
「出ませんよ。暑いじゃないですか。防具なしでいいって言われたってやりませんよ。それより今日は僕、土方さんに聞きたいことがあってわざわざ来たんです。」
「あ?聞きたいこと?」
ニコッと首を傾げて一気に言うと、怪訝な顔をしながらも部活のことについての小言を言うのも忘れて話を聞く態勢になってくれる。
こういうところ、扱いやすいっていうか…。
「はい。でも、ちょっと暑いしここじゃなんだから。」
にっこりと頬に力を入れて笑顔を作り、言いながら来た道を戻るように回れ右をして土方さんに背をむける。
「…なっ?おい待て総司」
慌てて着いてくる土方さんの声を後ろに、僕はまっすぐに駅を目指して眩しい木漏れ日のトンネルを突き進んで行った。