僕のおねえさん
□76.
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☆★島田さんのお店はちゃんと利益出てるのでしょうか?★☆
唇が…、じんじんとしてなんだか少し痺れてる…。
なんていうんだろう…、こう、
土方さんの唇が…、私の唇にそっと吸い付くように挟まれるというか、なんていうか、ほんとに優しく優しく、くっつく感覚が…、
無意識にそっと人指し指で触れてハッとすると、キッチンの対面カウンターからジッと見つめる据わった瞳…。
「…………。」
「……、………っ!!?に"ゃぁうおっ!!」
「…にゃぁおって…、ていうか名前ちゃん変」
「へっ!変!?」
じーーーーーーっと半目で見つめられ、飛び出しそうな心臓を抑えるように両手を抱え込んで前かがみになって飛び退くと、はぁぁっと深いため息をつかれる。
「名前ちゃんもか…」
「……え?」
「ここ最近僕の周りには妄想の世界に入り込んじゃう変人が増えたなぁ〜って話。」
「なっ!?……、へ、変人?」
「そ。現実の世界じゃ思い通りに満たされなくてどうしようもない侘しさを空想の世界で思い描いてそれで一人で現実逃避して満足するイタい人」
はぁ、やれやれ。と肩をすくめて言いたいことだけ言って、呆然とする私を置き去りにリビングのソファーにどっかりと座りこむ。
「へ…、変人って、…ひどい。」
変人だなんて初めて言われたよ。しかも弟に。同じ血を継いだ身内なのに。
ぶぅっとむくれながらキッチンを片付け、冷蔵庫にしまっておいたエクレアを取り出す。
「そんなひどいこと言う総ちゃんには、もう分けてあげなんもんね〜」
ふ〜んだ、と言いながら自分の分のコーヒーを準備していると「え?何を?」とソファーから振り向いて尋ねられる。
「島田さんのエクレア。せっかく総ちゃんの分ももらったのに。総ちゃん意地悪だからあげない。私が全部食べちゃうから」
「え〜、なにそれ。そういうことは先に言いなよね。」
「……、先に言ってたら意地悪なこと言わないんだ…。」
「さぁ?」
「さぁって…、」
「まぁいいじゃない、 それにいっぺんに二つも食べたら名前ちゃん、太るよ」
カップにお湯を注いでコーヒーの香りが立ったと同時に横に来た総ちゃんに脇腹をぷにっとつままれる。
「っ!?、そっ!総ちゃんっ!?」
「あっはは!ほら、だから僕の分もちゃんとコーヒーよろしくね」
「あっ!ちょおっと!」
軽く小馬鹿にしたように笑いながらエクレアをひょいっと持って軽い身のこなしでリビングへと戻っていく。
「ん〜もぉ〜〜〜〜!」
ぷにっとされたところがまだつままれた感覚が残っててすごく恥ずかしい。
というかなんか悔しい!
ん〜〜〜〜〜〜〜、
太ってな いもん〜〜〜〜〜〜!
って思うけど、同時にやっぱり痩せてた方がいいのかな…。
なんて思ってしまう自分がいて、
こんな事思うのって、やっぱり…、
土方さんからどう思われてるんだろう、なんて気になっちゃうからで…。
ひ…、土方さんって、その、
スタイルもすごくスラッとしてて、…その…………、
背中に手を回した時…、シャツの上からでもわかるくらい、余計なお肉とか全然なくて…、
すごく………、
〜〜〜〜〜!!
今までダイエットなんて考えた事なかったけれど、これからは健康プラスシェイプアップの方向で 食生活を考えなくちゃダメよねっ!
余分なお肉とかこんなん蓄えてちゃダメっ!
絶対ダメっ!!
「じーーーーーーーーー。」
「っっっ!!!?」
気が付くとまた総ちゃんにじーーーーっと見られてた。
無意識に両手で頬を挟んで左右にイヤイヤしてた事に気付き、拳にコホンと小さく咳払いする。
「う……、うぉほん、…何かな?」
「…………………………やっぱ変。」
「………………。」
何も言い返せない。
のでだまって総ちゃんの分のコーヒーも用意して何事もなかったフリでリビングへと運んだ。