僕のおねえさん

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夕方、週明けの下準備がほぼ終わる頃、原田先生から連絡が入りこの後飲みにと誘われた。

そういえば月曜日に保健室からお店へ戻る時に飲みに行こうって言われてたけど、まさか本当に誘われるなんて…。普通に社交辞令かと思ってた…。


どうしよう。飲みに行く、なんてこれまで忘年会とか暑気払いとか会社で何かあった時くらいしかなくて、個人的に誘いあって飲みに行くなんて女の子同士でも滅多になくて、仕事帰りはほぼ直帰なのに…。
とりあえず総ちゃんに聞いてみようかな。前みたいに会社の集まりでってわけじゃないし…。

それに…、会社以外の男の人と飲みに行くって事が私には少しハードルが高いって言うか…、
誰かの後押しがないとなかなか踏み出す勇気がない…っていうか…。


そう思って電話したのに…。




「飲み会でしょ、原田先生と。」

「え…?」

「さっき学校で原田先生から今夜名前ちゃん借りるぜって言われたから。行くんでしょ?」

「え…、ぁ…、えっと…」

「行ってこればいいじゃない。名前ちゃんいつも会社からまっすぐ帰って来て夜ご飯の支度してくれてるけど…、僕のことなんか気にしないでたまには羽伸ばしてきたっていいんだよ?」

「で…、でも…」

「お構いなく。それじゃ、楽しんでおいでよね」

「総ちゃ…」





突き放されるようなカタチで通話は終了。
なんだかご機嫌ナナメな総ちゃんの様子に言葉もなく、なんだかスッキリしないもやっとしたものが胸の奥につかえたまま残務処理を済ませて原田先生に折り返し連絡をした後、待ち合わせ場所へと向かった。



原田先生のお心遣いで、お店は家からの最寄り駅。いつもの利用駅だから集合場所まではいつも通りの道程で帰ってくる。





「おーーぃ!名前ちゃん!こっちこっちー!」



駅の改札を出て待ち合わせ場所へ向かおうとすると思わぬところで名前を呼ばれて、人の行き交う先へ声の元を探してキョロキョロしてると後ろからぽんっと肩に手が置かれて慌てて振り返る。



「よっ!おつかれ」

「あっ…、は!原田先生!ぉ、おつかれさまです」



肩に置かれた手で背中を押されるように方向転換させられ人の波を抜けると「よぉ!」と片手を上げてにかっと笑う永倉さんの前に辿り着いた。




「名前ちゃん!おつかれさんっ!来てくれて嬉しいぜ!」

「永倉さん…、おつかれさまです」

「ぃや〜!仕事あがりに名前ちゃんと飲みに行けるなんてサイコーだなっ!早く行こーぜ!」

「ははは、新八、前見ろよ。ったく…、あいつ名前から行くって返事があってからずっとあんな調子なんだぜ。」



早く早くと手招きしながら先を行く永倉さんの後をついて歩きながら原田先生は保護者のように呆れながらも優しく笑って眼差しを向ける。


本当のこと言うと、ここに来るまでずっと、『まずはなんて言ってごあいさつしよう…』とか、『男の人の会話ってどんなんだろう?』とか、『二人の会話に参加していけるのかな』とか、『私なんかが参加して変に空気が気まずくなったりしちゃわないかな』とか、いろいろ考えてたけれど…、



「おーーぃ!名前ちゃ〜ん!ここここ!早く来いよ〜!」

「新八!人前ででかい声で名前呼ぶなっつの!」

「お前こそ俺の名前叫んでるじゃねぇかよ左之っ!」

「あっ!くそっ俺の名前まで…!名前、行くぞっ!」

「は…、はいっ!」



お店の前に立ち大きな体でオーバリアクションを取りながらはしゃぐ永倉さんに向かって笑顔で走る原田先生に手を引かれて、私もさっきまでの心配事なんてすっかり忘れて笑いながら走っていた。
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