僕のおねえさん

□58.
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☆★おねえさんの味方、島田応援団長★☆QLOOKアクセス解析






「名前さん…?」


「…………。」

「……、」

「…………………。」

「……、あ、あの…、名前さん?」



黙々と手を休めることなく手元を見つめて作業を続ける私の横に島田さんが並び、気遣わし気に声をかけてくる。


………、やっぱり、
あんな時間にわざわざ呼び止めるなんて常識外れだったかな…。ただ朝の挨拶するだけのつもりだったのに…。なんであんな風になっちゃったんだろう…?
土方さんが忙しい人だって意識しすぎて必要以上に慌てて緊張しちゃったんだ。きっとそうだ。だって土方さんちにお邪魔した時とか、保健室でそばにいてくれた時の彼は、さっきと全然雰囲気が違ったもん。
会議の時間が迫っているなんて、本当にそんな大事な時にあんなわけわからないこと言って…、バカって言われても仕方ないよね。
やっぱりお仕事中に声を掛けるなんて社会人としてダメだったんだよ〜!
あああああ、ダメだ私ダメダメだぁあ〜!



「……、名前…、さん?」

「…………。」

「名前さん!?」

「うっ?え?ぇ、あ?……っ!えぇええっ!?」



島田さんに横からいきなり呼ばれてハッと気付けば、千切り用に用意していたキャベツを全て切り終えた上に、他の具材にするはずだった野菜まで殆ど全て千切りにしてキャベツの山の上に無意識に山盛りにしてしまっていた。



「ぁぁぁあああ!な!なんでこんなことにっ!?」



ぎゃぁぁあっと両手で顔を挟んで目の前の信じられない野菜の山に叫ぶと、「先程から声を掛けていたんですが…」と何故か申し訳なさそうに島田さんが呟く。



「名前さん…、やはり先程の事…、」

「……っ、」

「やはり……。土方先生…、名前さんが男性恐怖症だと知りながら、あんな風に名前さんが怖がるような事を…」

「え!?」



島田さんに気遣わせてしまって申し訳なくて俯くと、突然普段の穏やかな口調を少し苛立たせたように低く唸るような声で男性恐怖症だとかなんだとか聞こえてくるから驚いて顔を上げると、私の声にびっくりしたのか島田さんまでもが「え!?」と私と同じように視線を上げる。



「え?……って、違うのですか?」

「え…?違うって……、???」

「その…、名前さんが放心状態になっていたのは、さっき土方先生に羽交い締めにされたことが原因であまりの恐怖のせいで…」

「え?え?え?ち、違います違います!確かに突然でびっくりしましたけど、そんな怖いとかそんなんじゃなくて…」

「は…、はぁ…」

「そ…、その…、お忙しいのに呼び止めちゃって…、悪いことしたなぁ……、って…」



言ってるうちにどんどん心が萎れていくみたいに目線が下がってはあぁぁとため息が出てしまう。

そんな私を見て島田さんもふぅぅと鼻からため息を吐いて肩を大きく下げるとふっと微笑んで大きな手のひらで私のしょぼくれた肩をポンポンと優しく撫でる。



「そうでしたか…。私はてっきりまた男性が怖くなってしまったのではないかと心配しました。」

「島田さん…」

「あんな風にされても何ともないのなら、もう大丈夫ですね」



見上げると小さなつぶらな瞳を細くして優しくにっこり笑う顔を傾ける島田さん。
島田さんには本当に心配ばかりかけてしまってるなぁーと毎度の事ながら改めて思う。



「すみません。そんなことまでお気遣い頂いて…」

「いいえ?大事な事ですから。名前さんに何かがあってはいけませんからね!」



にっと明るい笑顔でそう言われて私もつられて口角を上げる。
けれどやっぱりうまく笑えてなかったみたいで、島田さんの笑顔が瞬時にまた心配顔に変化する。



「………、土方先生なら…、お昼休みにまた来てくださると仰っていましたし…、あまり気に病むことはありませんよ」



もう一度ポンっと私の肩の上を跳ねる島田さんの掌から「元気を出して!」とメッセージが伝わってくるようで、自然と気合が入るような気がする。



「……、そうですね!すいません、いつも仕事中に落ち込んだりして…」

「ははは、大丈夫ですよ。何を考えているのか分からないような人より名前さんのように色々打ち明けてくれる人の方が仲間としてありがたい事ですから。なんでも困ったことがあったら聞かせてください。お力になれるかどうかは分かりませんが、相談に乗りますよ」



そう言って笑う島田さんは本当に頼り甲斐のある懐の大きなお父さんみたいで、つい甘えて「はい!」なんて調子に乗って返事をしてしまう。



「それにしてもこの野菜…、どうしましょうか…」

「…………あーーー……」






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