僕のおねえさん

□56.
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晩ご飯の後片付けを済ませた私は自分の部屋に戻ると、小学生の頃から使っていた学習机に向かって椅子をゆらゆらと揺らしながらとある本に夢中になっていた。



「ふふ…、やっぱりおもしろいな…」



椅子の背もたれに背中を預けて左右にゆらゆらゆらゆら…。

もうこの椅子も随分古いのに私が体重をかけてもしっかり受け止めて軋んだ音すらさせないでいるなんて、ホントにうちの物って物持ちがイイな、なんて思いながらも本の内容にくすくす笑ってしまう。



「何がそんなにおもしろいの?」

「っっっ!!?」



不意に背後から声をかけられてものすごく心臓が飛び跳ねた!
ドキドキ煩い心臓を抑えながら勢いよく振り向くと、声の主は思ったよりも近くに顔を寄せていて、視界を遮る総ちゃんの横顔にまたまた驚いて固まってしまう。



「そっ、総ちゃん!び……、っくりしたぁ〜…」



胸を撫で下ろす私の様子を私の右肩の上から顔を覗かせて見下ろす総ちゃんはなんだかニヤニヤとしてるみたい。



「そんなに驚かなくたっていいじゃない」

「お…、驚くよ〜!ドアが開く音もしないでいきなり背後に立たれたらー!」



はぁーっと盛大にため息をついて肩を落とす私に「ごめんごめん」と全然反省の色を持たない声でテキトーに言う総ちゃんは、「で?何がそんなに面白かったの?」と私の手元に視線を向けた。



「あ、あぁうん、ちょっと本がね…」



別にやましい事なんて全然ないんだけど、総ちゃんのニヤニヤ顔になんとなくよからぬ予感を感じてサッと閉じて机に伏せる。
本から視線を外すことなく、「ふぅん…、本屋さんに寄ってきたんだ」と呟いて本からネットリとした動きで視線を向けられる。
ホントにやましい事なんて全然絶対ないのにそんな風に見られるとやっぱりなんとなくたじろいでしまう。



「あっとえっと…、本屋さんには行って、ない、よ?」



総ちゃんの視線に耐えかねてドギマギしながらもそう答える私は何故か左に重心を傾けてて。

「ふぅん?」と目を細めてニヤニヤ口端を持ち上げる総ちゃんの顔が徐々に寄ってきてる気がするのは私だけでしょうか?

腰の右側が伸びに伸びて軋んだ音を立ててしまうんじゃないかって位に傾いた時、机に伏せておいた本がサッと素早く取り上げられる。



「あっ!総ちゃん!」



取り上げられた本を追って見上げると背の高い総ちゃんはそれを高々と掲げてタイトルを見上げる。



「…………、名前ちゃん、こーいうの好きなの?」



本は高いところに掲げたまま、顔をこっちに向けられ、そして何故か疑わし気に聞かれる。



「え…?あ、あぁ…、うん!好きだよ?」



どうしてそんな聞き方をするのかわからなかったけど、私がこんな渋い趣味を持ってるだなんてきっと思いも寄らなかったんだろうな。
趣味とまではいかないけれど、この人の作品が好きなことには違いないから素直にそう答えると、総ちゃんはじとっとした目つきをキョトンとさせると「へぇー、そうなんだ…」と、どことなく視線を彷徨わせるようにほんの少し居心地悪そうにそっぽ向いた。

そんな表情の変化を不思議に思っていると再びニヤリと総ちゃんの口元が弧を描き、「これ、名前ちゃんのなの?」と未だ高く掲げられたままの本に視線を向けてから私の顔をニヤリと見下ろす。



「あ…、あ〜…、んと、私の…、じゃあ…」

「誰かに貸してもらった、…とか?」



尚もニヤニヤしている総ちゃんになんて答えたらいいのか…。



「借り…た、のかな?」



気が付いたらベッドに置いてあったとは言えず、(保健室で寝ていたなんて言ったらまた心配かけてしまうだろうし…)曖昧に答えるしかない私を見て、やっぱり総ちゃんは「へぇー」と言ってなんだか蔑むような視線を本に向ける。



「名前ちゃんがこういうの好きだなんて、知らなかったなぁ〜。それに誰が貸してくれたのかは知らないけどさ、あんまりディープな趣味を持ってる人と関わらない方がいいよ?おかしな集会とかに誘われたりとかしたら名前ちゃん、しっかり断れるとは思えないしね」



そう言うと本を私に手渡して部屋を出て行こうとくるりと踵を返した。



「あ、それとお風呂。僕はもう終わったからよかったらどうぞって言いに来たんだ。冷めないうちにどうぞ?」



「集会?」と疑問顔の私に振り返ってドアを開けると、にっこりと笑顔を残してそう言ってパタンと音を立てて静かに扉を閉めて行った。

集会って…、なんなんだろう…。
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