僕のおねえさん

□55.
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カーテンが勢い良くシャっと開けられるとそこには大慌ての永倉さんと心配顔の原田先生の姿があって、私が驚く間もない程あっという間に目の前に永倉さんの顔が現れる。



「っッ!!?」

「名前ちゃん!大丈夫か!?具合が悪くなってぶっ倒れたって聞いて俺ァもぉー心配で心配でっ!」

「新八!揺さぶるな」



私の両肩を掴み前後に揺さぶる永倉さんの肩を原田さんが掴んで止める。



「はっ!!すっ!すまねぇ!つい…」



慌てて身を起こして口元に手を当て青褪める永倉さんの肩をグイッと引いて今度は原田さんが私の目の前に寄ってきてベッド脇で屈んで視線の高さを同じにする。



「さっきよりは随分顔色も良くなったようだな。ゆっくり休めたか?」

「は…、はい…。すっかり寝てしまっていたみたいで…。もう大丈夫です」



答える私に「そうか」と微笑んで右手を伸ばして私の頭にぽんと乗せる。



「あ、あの…、土方さんは…?」



今何時だとかお店の事とか他に聞くことだってあったはずなのに、なぜか一番はじめに口に出てしまった質問はさっきまでここにいた彼の事で、どうして彼の姿がここにないのか、それを一番に聞く自分も、自分で聞いておいてなんでそんな事を口にしたのか不思議でたまらなかった。



「ぇあ?土方さん?」



目の前で目を丸くする原田さんと、その頭上でおかしな声を出す永倉さんに、横からくすくすと笑いながらカーテンを開ける山南さん。



「土方君なら今頃五時間目の授業に向けて職員室を出たところでしょう…」



そう言い終わるかどうかのタイミングでチャイムが鳴り響く。



「あ…、それじゃあ…」



窓側へ向いて呟くと纏めたカーテンをタッセルで括った山南さんは、今度は窓際へ移動してカーテンを開ける。



「お店の方も、落ち着いたみたいですね。生徒へのお弁当のお渡しをお手伝いさせていただきましたが、予め引換券を配布していたおかげでスムーズに済んだと島田さんもホッとしていらっしゃいました。」

「そうですか…、あ、ありがとうございました」



土方さんの事を聞いた私に、それ以上の聞きたかったことを含めて答えてくれた山南さんになんだか心の中を見られているようで恥ずかしくなる。



「ふふ、どういたしまして。さ、あなたもお腹が空いたでしょう?島田さんから預かってきましたよ。」



そう言って後ろにある机の上に置かれたランチボックスを私に見えるように体をよけて見せてくれる。



「あ…、」

「起きてこちらで食べますか?それともそこで?」



頭を傾けて優しく微笑む山南さんは、やっぱり中性的な空気を纏っているようで、さっき怖いって怯えてしまった事に申し訳なさを感じる。
そんな思いが顔に出てしまったのか、「名前さん?」とさらに首を傾げて綺麗な髪をさらりと揺らす。

自分の名前を呼ばれてハッと見上げると、ふふっと笑って「島田さんがひっきりなしにあなたの事を話していたので…。」と言う。



「島田さんがそう呼んでいたので私もそう呼ばせていただきましたが…、よろしかったですか?」

「あ…、はい」

「ふふ、よかった。では私の事も『敬介さん』と呼んでいただけたら…」

「って山南さん!何さり気なく下の名前で呼んでもらおうとしてんだよ!おかしーだろーがっ!」

「ったく…、山南さんのそーいうところ、抜け目ねぇよな」



突然ベッドの周りでワイワイ言い合う三人の様子がおかしくてつい笑ってしまう。

こんな風に男の人ばかりの場所で、くすくす笑う自分が今までの自分から考えたら本当にあり得なくて、
でも、こんなふうに楽しいって思えることがすごく嬉しい。


くすくす笑う私を見て、それまで騒いでた三人ピタリと動きを止めて静かになると、次の瞬間みんな一緒になって笑顔が溢れる。

なんでみんな一緒に笑ってるのかわからなかったけど、それがすごく楽しくて嬉しくて…。



土方さんの言葉が、私を変えてくれたんだ。
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