僕のおねえさん
□51.
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☆★何言ってやがる★☆
保健室から逃げるように出てきた俺。
一体何から逃げ出したんだか…。
総司の姉のあの瞳にジッと見られるとどうも俺はおかしくなる。
横に山南さんがいなかったらどうなってた…?
押し倒した訳じゃねぇが、真っ白なシーツの上に横たえて、俺自身覆いかぶさるような体勢で…、30センチもないあの距離で見上げられて…。
………っ!!!
あの潤んだ翡翠の煌めきを脳内から振り払うように頭を振る。
ここは学校、
相手は総司の姉
そう自分に言い聞かせ弁当屋のワゴンをめがけて足を急がせた。
弁当屋の元へとたどり着くとワゴンの前に立ててあるボードは裏返されて『Closed』の文字と謝っているイラストが表示されていた。
車の中を覗くと大きな巨体がせせこましく動き回っている。
「何か手伝えることはあるか?」
カウンターから顔を覗かせて声をかけると、この男には少し低めの天井のせいで丸めた背中のまま作業していた島田は、俺の声に反応して目を丸くして振り返る。
「土方先生…!名前さんは…、」
「…あいつなら保健室に預けてきたから心配いらねぇ。」
俺の顔を見るなり作業していたものをほっぽらかしてカウンターに張り付く様は、もはや同僚というよりも娘を心配する父親そのものだ。
俺がたいした事でもねぇ現状を話すと「そうですか…」と大きく息を吐き出し萎むように胸を撫で下ろした。
「それよりもうすぐ授業も終わる。俺にできることがあれば手伝うが…」
「そんなっ!私共の事で先生のお手を煩わせるなんてとんでもないっ!大丈夫です。あとはそれぞれ蓋をして袋に入れるだけですから。」
そう言って慌てて拒絶するが…。
「そうは言っても40人分のもんを残りの時間でなんとかすんのはムリがあるだろう。今なら俺も手ェ空いてるし、やってやるつってんだから手を煩わせるだのなんだの言ってないで頼れるもんは頼っときゃいいんだよ」
「土方先生……、」
言いながらワゴンの後部扉へと移動すると中から扉が開かれ情けなく眉を下げる島田の顔が現れる。
「土方先生…、あなたのご厚意、ありがたく頂戴いたします…」
「ふっ…、堅苦しい事言ってねぇでさっさと終わらせるぞ。」
ワゴン車に乗り込み島田の指示を仰ぎ作業に取り掛かった。