僕のおねえさん

□50.
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☆★保健室で。★☆QLOOKアクセス解析





「山南さん、入るぞ」



保健室の扉を開ければ椅子に座った山南さんがいつものように笑みを浮かべて振り返る。



「おやおや土方君、どうかしましたか?」



にっこりと目を細めそう言った次の瞬間、ハッと目を見開き俺の横に立つ総司の姉を凝視すると疾風の如く素早い動きで目の前まで移動してメガネを光らせまじまじとその顔をみつめた。



「!?」



その素早い動きと目の前に迫る山南さんの丸メガネに、怯えて俺の腕をぎゅっと掴んで身を隠す。



「ひ…、土方君、こちらは…?」

「あ?なんだ?知り合いか?」



背をかがめ、俺の後ろに隠れるように縮こまった女から目を離さないまま聞いてくる山南さんから、女へ視線を移して訊ねてみると袖をキュッと掴み直してぷるぷる小刻みに首を横に振る。



「こ、この方は…、最近人気急上昇中のあのアイドル…」
「違ぇよ !弁当屋の店員だよ!」



ゴクリと生唾を飲み込みながら眼鏡の縁を上げて呟く山南さんにソッコーで否定する。
てかなんで俺が答えてんだよ…。つぅかほんとに誰と間違われてんだ、こいつは…。



「はっ!こ、これはこれは…、私としたことが…。大変失礼致しました。それで、この方、随分顔色が良くない様ですが…?」

「あぁ…、原田が言うにはどうも貧血らしい。少しの間ここで休ませてやってほしいんだが」

「あぁ、そういう事でしたか。わかりました。今は誰もいませんし、ゆっくり横になってください」



かがめていた背を伸ばしてベッドへと向かう山南さんに続き女を前にし背中を押すように手をあてると「でも私…、」と小さな声で見上げてくる。



「いいから休んどけ。疲れが溜まってんだ。弁当屋の方は様子見て俺が手伝う。心配すんな」

「さ、こちらへ」



カーテンを引き、整えられた窓際のベッドへ誘う山南さんのそばまで背中を押して連れて行きそこに座らせる。



「あぁ、それから山南さん。ついでに湿布薬こいつの腕に貼ってやってくれ。」



そう言うと弾かれたように俺を見上げてめちゃくちゃ不安そうな表情を浮かべる。



「湿布薬、打ち身か筋肉痛ですか?」

「あぁ、筋肉痛だ。おそらく左腕は上腕から全部貼ってやった方がいいだろう」

「わかりました。ではシャツの片側だけでも脱いでいただいて、腕を出していただけますか」

「!?い!い、いぇ!大丈夫です。そんな!こんなのほっといてもすぐ治りますから!」



慌ててベッドから立ち上がり手も頭もブンブン振るもんだから、こいつの鉄板パターンでそのままベッドへと沈んでいく。



「…っ!……ったく…」

「あぁ!大丈夫ですかっ!?」



ベッドに尻もちついてそのまま後ろに倒れて行く女の背中を辛うじて受け止め、そのままゆっくりと背中を横たえてやる。



「ったくお前は…。具合悪い奴が頭振り回すんじゃねぇよ」

「で…、でも…、」

「っ…、」



なんて顔で訴えかけてきやがるんだ…。

ベッドに沈んだ顔面蒼白、泣きそうな目で上目遣いに訴えられると正直な話困るというかなんというか…。
その揺れる瞳の色といい、俺を頼るような懇願の眼差しを向けられて何故か体の奥の方が締め付けられるような、内臓を鷲掴みされるような感覚に戸惑ってしまう。



「とっ…、とにかくここで休んでろ。余計なこと考えるんじゃねぇ、わかったな!」



俺の袖を頼りない力で掴んでいた手を離し、糊の効いた掛け布団をバフンと覆い被せる。



「っ!土方さ…」

「こいつが抜け出さないよう注意しといてくれ」



布団から顔をもがき出して俺を呼ぶ声が聞こえたが聞こえないふりをして山南さんに託して保健室を後にした。
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