僕のおねえさん
□48.
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☆★睨み合いの末…★☆
あの声は…!
木々の間を駆け抜けるとワゴンから少し離れたテラス席に見えたあいつの後ろ姿。
その背中越しに見えたのはこの学園の悩みの一つでもある問題児、風間千景とその連れ達。
「風間っ!」
奴の名を叫びその場に駆け寄ると、奴は一度俺に視線を寄越しフッとあざ笑い目を伏せた。
「フッ…、登校早々煩い奴等め…。」
「風間、てめぇ…。今一体何時だと思ってやがるっ!?」
「この俺に時間を聞くなど…、お前は時計すら持ち合わせておらぬのか。これだから庶民は…」
そう言って徐に左手を伸ばして袖から腕時計を確認しようとする風間についムキになって怒鳴りそうになったが、ちょうどワゴンの向こうから原田が勢い良く飛び出して総司の姉の名を呼ぶ声に、風間に対しての言葉が喉の奥に引っ込んだ。
「名前っ!」
目の前で総司の姉の肩を抱きかかえるように、風間から隠すようにその顔を覗き込む。
「名前…、顔色が悪いじゃねぇか…。風間に…、あいつに何かされたんじゃねぇのか?」
「は…、原田…さん…、」
覗き込む原田に視線を合わせる首の動きはやたらゆっくりでその声もか細く震えている。
「風間…、てめぇ一体なにしやがった!?」
二人の後ろから奴の前に出て距離を詰め睨みつけると、尚も人を見下すような笑みを浮かべて鼻を鳴らす。
「フッ、何をしやがったとは…。そこの女の方こそ、何をしているのかと訊ねただけだ。」
「何をって…、んなもん見りゃわかるだろうが」
「商売をしているのは言われずともわかる。だが、誰の許可を得てこんなマネをしているのかと聞いているのだ」
そう言うと俺の肩越しに視線を向け更に見下すような目つきで問い質す。
「誰の許可って…、」
チラリと視線だけで後ろを見遣ると原田に支えられた両肩が大きく跳ねるのが見えた。
視線を風間に戻し睨みつける。
「誰の許可もなにも、てめぇにゃまず関係ねぇ。許可ならちゃんと学校側とこいつの会社とで契約結んでやってんだ。てめぇにとやかく言われる筋合いなんてねぇんだよ!」
吐き捨てるように説明してやると納得したのかなんなのか…、「ほう?」といつも通りの反応で顎をあげて上から目線で俺を見下すように見ると、そのまま総司の姉へとその視線を向ける。
「俺の知らぬうちにこのような商売を始めるとは…」
「……てめぇにいちいち報告する義務はねぇ。だいたい連休明け、勝手にサボるから状況の変化についてこれてねぇだけだろうが!」
「ハッ!この俺が連休明け、たった一日の為に登校などするはずなかろう!」
「今日も堂々と遅刻してきやがって…!来たと思えばいちいち絡みやがる。だいたいてめぇら学校に何しに来やがるんだ!」
「フッ!いつもながらくだらぬ事を…。生徒会長の俺が不在で誰がこの学園を統べるというのだ?わざわざ出向いて来てやっているというのに…。感謝されこそすれ、貴様に怒鳴られる筋合いなどないわ!」
「チッ!何が生徒会長だ!?いい歳してケッタイな格好して来やがって!暇潰しに邪魔しに来てるだけじゃねぇか」
こいつと顔を合わせると碌なことがねぇ。毎度毎度の口喧嘩が勃発する。
俺たちがゴタゴタしてる間に空になったケースを乗せた台車の音が近くに聞こえてきたかと思うと一気にその音が速度を増しワゴンの向こうから原田と同じように総司の姉の名を呼んで勢いよく島田が姿を現した。