僕のおねえさん

□47.
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週明け、私が作ったお弁当引換券は何の予告もなく朝の正門前で配布されたにもかかわらず、風紀委員の協力のもと本日の販売数量分全てが売り切れ、その売上金は私たちが学校に到着して間もなく土方さんによって間違いなく届けられた。



「確かに40食分、受け取りました。ありがとうございます!朝から御手数おかけすることになり、申し訳ありませんっ!」




ワゴンの中でお弁当の仕込みを始めようと痛む腕を必死に動かしながら用意していると、島田さんのハキハキとした大きな声が聞こえてきた。



「………、あ、あぁ…。因みにこれが今日の職員の発注分だ。よろしく頼む。」

「はい!確かにっ!ありがとうございます!後ほどお届けに上がります!」

「………、頼んだ…」



島田さんの声はここにいてもすごくハッキリと聞こえてくるけど、それに返答する土方さんの声はイマイチよく聞こえてこない。
如何に島田さんが明朗快活であるかがよくわかる。

やがて会話が終了したのかどちらの声も聞こえなくなったな〜と思うとワゴンの後部扉が開けられ、ずしっと車体を少しだけ沈ませて島田さんが中に入ってきた。



「今、土方先生が生徒さん達からの注文分の売上金を持ってきてくれましたよ!それと、名前さんが作って下さった引換券も全部渡しておきました!」



ジャラっとたくさんのお金が入った小さな金庫を顔の横に掲げてにこっと向けられる笑顔を見ると、その笑顔だけで私まで明るい気分になれる。



「引換券、初日から完売ですか、今日も張り切らなきゃ!………ぃてて…」



島田さんの笑顔と完売御礼の嬉しさからつい張り切って気合を入れると、昨日一日酷使した腕の筋肉が『あなた筋肉痛ですよ〜。お忘れですか〜?』とギチギチお知らせしてくれる。



「あぁあ、大丈夫ですか?今日は無理しないで…」



顔を顰めた私に慌てて駆け寄って心配してくれる島田さんは更に申し訳なさそうな顔をする。



「大丈夫ですよ、これくらい。ただの筋肉痛ですから。」

「しかし…、あぁ…、旅行なんか行かずに一緒に作業していれば名前さんにこんな痛い思いをさせずに済んだのに…。本当に申し訳ない…!」



クッと眉をひそめて唇を食いしばった顔をそむける島田さん。そんな彼に「もぉ、大袈裟ですよ〜」と苦笑いして左腕をさする。



「家族旅行、楽しんで来られたんでしょ?島田さんの家庭が円満になるんでしたら私の筋肉痛くらい安いもんですよ!きっと明日には……、明後日には治りますから!」

「名前さん………。よぉし!名前さんの筋肉痛にかけて、私はこれからも家内安全夫婦円満をモットーに励みますよ!」



じわっと潤んだ瞳を揺らめかせたと思ったら、気合を入れ直すかのようにフンッと鼻息を出して宣言する。
うんうん。やっぱり島田さんはいい人だ!



「さぁ!それじゃあ私も手伝いますよ!力のいる作業はどんどん任せてください!名前さんが休日出勤した分もしっかり働かせてもらいますから!」



ワゴンの中で大きな声で張り切る島田さん。
こんなに優しくて一緒にいると元気になれる人と働けるってすごく幸せなことだと思う。
島田さんの奥様は本当に幸せ者だ!
理想の夫婦像を思い描いてるんるん気分で作業を続けた。
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