僕のおねえさん
□41.
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☆★土方さんちの冷蔵庫★☆
「あ…、あのぉ〜…、」
冷蔵庫を閉めた私はキッチンからおずおずとリビングへ移動して、土方さんが座るソファーの横に立ちおずおずと声をかけた。
「あ?」
読んでいた本から顔を上げて、五十音図において第1行第1段、五十音順第1位である『あ』一文字だけで、なんだと聞き返される。
うぅう…、こういうとこが苦手なんだよもぉ…。
「あ、あのですね、あの、そこら辺にあるものっておっしゃいましたけど、あの、冷蔵庫の中、…の事ですよね?」
「そりゃおまえ、料理に使うもんなんてだいたい冷蔵庫の中のもんに決まってんだろぉが」
「ぇ、や、それはそうなんですけど…、」
「………、んだよはっきりしネェなー」
いらっとした口調でそう言うと読んでた本を閉じてローテーブルの上にばさっと音を立てて置く。
その音に当然私はビクついて肩が跳ね上がるわけだけど、
ソファーから立ち上がった土方さんは、そんな私の肩に手を置いてキッチンへと歩いて行く。
「こんだけいろいろありゃぁなんかできるだろ?」
冷蔵庫を開けて振り向いて言われるけれど…。
「え…………、でも…」
土方さんの隣に立ち同じように冷蔵庫の中に視線を向けると、そこにあるのは、いかにも高級感漂うのし紙付きの箱が包装紙も外さないまま、多分もらった時の状態のままで冷蔵庫に詰まっていた。
「これって…、中身ちゃんとみました?」
「あぁ???」
「…、んもぅ、あぁ?じゃなくて…。ちょっといいですか?」
もう、さっき私のこと『はっきりしねぇ』とか言ってイラっとされたけど、私だってそろそろこの人の返事の仕方にひとこと物申したいくらいの気持ちはあるんだからねっ!
………、実際言わないけどさ…。
「これ、包装紙も外さないでそのまま入れるなんて…、賞味期限とか確認してあるんですか?」
冷蔵庫の中からよく冷えた箱を一つずつ出して土方さんに手渡す。
「賞味期限って…。んなもんいちいち確認なんてしねぇよ。だいたい半年くらいはもつだろう」
「もつだろうって…。じゃぁこれとかいつもらったか覚えてるんですか?」
どんどん土方さんの手の上に大きな箱を積み重ねながら訊ねれば、「んなもん…、お歳暮って書いてあるからだいたい半年前だろ」とかなんか偉そうに答える。
「じゃぁそれ、土方さんの定義で言ったらそろそろアウトじゃないですか」
半年なんでしょ?と見上げて言うとちょっとは効いたかな?
ぐっと息を飲んで眉をしかめちゃったりして!へへ〜んだっ!
「よ、よしわかった。じゃぁこいつから使ってもらう」
そう言ってお歳暮と記されたのし紙のかかった箱から順に包装紙を外していく私たち。
まず土方さんが開けた箱の中身は…。
「……こ、これは………、」
「…………。」
箱の中身を見て固まる土方さんと、その面白い顔を横からしら〜っと見つめる私。
「これ、冷やしてもどーにもなりませんよね?」
「………、」
「しかも賞味期限というか、有効期限?そろそろなんじゃ…?」
「……っ…」
歯を食いしばって微かに震えている気もしないでもない彼が視線を落とす先には、豪華な箱にはめ込まれるように入っている冊子。
いわゆるカタログギフトというやつであります。
「早く注文ハガキ送らないと使えなくなっちゃいますね。」
「………、」
「中身確認して良かったですね」
「………、」
「………。」
土方さん、ちっとも返事してくれなくなっちゃった。
そろ〜っと首を傾げて俯くその表情を伺おうとすると、
「次だ」
ぅわお!?
いつものスタンダードひじーだっ!
何事もなかった事にしてる!
わーわーわーーーっ!
だけど、そんなスタンダードひじーにツッコミ入れるなんて、それこそ今の私の経験値じゃ恐れ多くて黙って次のお歳暮ギフトをそっと彼の前に差し出した。