平助の母親

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「あいつは俺の生徒の母親なんだ」


何から話始めたらいいのかなんて考えもせずにまずはあいつの事を話す。
するとやはり驚きの声をあげる近藤さん。


「なっ!?なんだって!?」
「俺のクラスの苗字平助の母親だ。母子家庭で平助と二人で生活している。近藤さんに初めて車屋に連れてってもらった翌週の個人懇談で教室に現れたときは俺も驚いたよ」

その時の名前を思い出し思わず頬が弛む。


「それから数回しか会ってないが、その数回のうち、あいつと過ごす時間、あいつと交わす会話、たったそれだけの事なのに、俺は…、」


それから後の言葉は決まりきった一言しかないのに、
本当に言ってしまっていいのか躊躇ってしまう…。




「………、トシは…」


俺がなかなか次の言葉を続けないからか、近藤さんが話始める。

「トシは、もしかして教師という立場を考えて迷っている、のか?」

「………。」

「もしそうだとしたら、それは気に病む事ではないよ」
「!?」


その言葉に驚き近藤さんの顔を見ると近藤さんはしっかりとしたまっすぐな瞳で俺を見つめていた。


「確かに、教師と保護者がどうにかなってしまうっていう話は稀に方々の学校で聞く問題ではあるが、それはあくまでも夫婦揃っている家庭の場合で、苗字さんにはご主人はいないのだろう?」

近藤さんの問いかけに頷いて答える。

「それと、苗字さんの気持ちもあるだろうが、…お前が教師の権力を使って脅迫めいたことをして無理やり苗字さんを付き合わせている訳じゃないんだろ?お互い惹かれあっているように俺には見えた。それで充分じゃないか。教師だからという以前にお前だって一人の男なんだ。苗字さんのような女性が近くにいたら、そりゃ〜ほおっておくわけにはいかんだろ!」



最後の方は多少近藤さんの個人的意見が入っているようだったが、どうやら俺と名前の事を応援してくれるようだ。
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