平助の母親

□38.
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「はぁあ!?マジかよ!?ヘースケとかわんねぇじゃねぇかよ!いや、ヘースケのがあか抜けてる分上かも…」


え?ちょっと聞き捨てならない事言ったよ?なんだって???


「ま、マジで名前ちゃんかよ〜!どんだけかわいいんだってんだよ!眼鏡っ子とか!どんだけ萌えアイテム投入してくんだよ!マジやべぇよ!いつものメイクもかわいいけどノーメイクの幼顔もたまんねぇなオイっ!」

大興奮の永倉さんが両手を顎の下で握って女の子のようにキュンキュンポーズでわたしに近づいてくる。

お酒も入って温泉に浸かって酔いが回っているのか、ノリがいつもよりハイになってる。
あまりの勢いにたじろいでいると、
あっという間に永倉さんに手を取られて両手で握りしめられる。


「あ!あの!?」

「手だってこぉんなにちっちぇえし、どおなってんだよオイ」

わたしの右手の甲をなで始めて、くすぐったいやら恥ずかしいやらでゾクリと鳥肌が立つ。
手を撫でていたかと思ったら、その手をぐいっと持ち上げられ、わたしの手に頬擦りし始めた!

「やっ!あっ、あの永倉さん!?」

驚くわたしの声と同時に横から伸びてきた手にすごい勢いでぐいっと手首を捕まれ、永倉さんも原田さんに肩を捕まれ後ろに引き離される。



「新八、ちょっとアルコール入りすぎじゃねぇか?こいつぁ飲み屋のネェチャンじゃねぇんだから」

いつもの原田さんとは違い、凄みを効かせた目付きで永倉さんを睨み付けわたしから距離を取るように離れていく。




「チッ!…お前も何手ぇ握られてんだよ」

私の手首をギュッと掴んだ土方先生は、二人が遠ざかっていくのを鋭い眼差しで見届けたあと、ため息混じりに言いながら私を見下ろし掴んだ手を離す。



……、なんか、先生
すごくイラっとしてる…。



離された手首は思いの他痛みが残って、思わず胸の前で抱え込んでしまう。

けれど本当に痛いのは掴まれた腕よりも土方先生に呆れられた事の方が無性に悲しくて痛む胸の痛みだった。



先生に呆れられる事なんて何度もあったのに…。


痛む手首で胸を押さえつけてうつむいたまま顔をあげられずにいると、
「…それじゃぁ我々もそろそろ戻るとしましょうか」
と島田さんを始め他のスタッフもぞろぞろとロビーの階段を上っていく。


「苗字さん、いきましょう」


最後に残っていた山崎さんが振り向き私に声をかけて、みんなの後に続いて階段を上っていく。

ソファーに置いていた荷物を手に取り黙って山崎さんの後を追うように小走りで階段をかけ上がる。

近藤さまがわたしの名前を呼んだような気がしたけれど、今のわたしの顔は誰にも見られたくなくて振り返らずにその場を後にした。


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