平助の母親

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ホテルに戻り、マダム組との夕食も済ませ、近藤さんと一緒に風呂へと続く階段を下る。
屋内の大浴場と屋外に沸く天然温泉が売りのこのホテル。

マダム組はホテル到着後に入り、どっかに出掛けて帰ってきたあとに入り、夕飯前にも入ったらしく、

「あら奥さま、お肌艶々じゃなぁい!」
「奥さまこそプルプルよ!帰ったらご主人喜ばれるわよぉ〜!」
「あらやだど〜しましょ〜!」

とかいって騒ぎやがって、飯ぐらい静かに食えねぇのか!
と怒鳴りそうになるのをなんとか近藤さんの面子のためだけに堪えたもんだ。


あれだけケチつけることだけには長けたマダム組が絶賛する温泉だ。
せっかく近くまで来てるのにこの湯に入らずに名前は帰るのだろうか?

そう思うと俺は先に近藤さんに脱衣所に入ってもらい、ケータイを取りだしメール画面を開く。

するといつの間に着信していたのだろうか、名前からのメールが一通。


『おつかれさまです。もうお食事は済みましたか?苗字特性スペシャル豚汁をお召し上がりいただけなくて残念でした。ホテルのお料理は美味しかったですか?
突然ですが、実は私たち誠自動車のスタッフもこれからそちらのホテルの温泉に突撃することになりました。
もしかしたらまたばったり遭遇するかもしれませんね』


文面を読み終わると同時に脱衣所の中から賑やかな声が聞こえてくる。


返信画面に『無事遭遇致しました。』と入力して送信する。

このメールをあいつが読むのはたぶん風呂上がりになるだろうが…。

ため息を付きケータイをしまい、脱衣所の扉を開ける。
何が悲しくて初対面の奴らと裸の付き合いしなきゃなんねぇんだか…。

見ず知らずのヤツならともかく、これからもどうせ近藤さんの付き合いで顔会わせなきゃならねえと思うと気が進まねぇ。

なるべく一緒にならないようにこっそりしていようと心に決め、後ろ手に扉を閉めて視線をあげるといきなり全裸の男達に囲まれた近藤さんが視界に入る。


「やあ、土方さんも!奇遇だねぇ、早く脱いで!ほら行こう!」

やたら近藤さんと仲の良い井上さんに発見されて手を引かれる。

「ぃや…、ちょ、ちょっと待ってくださいよ…」
まだ脱いでねぇし…。全裸で迫られても困りますからっ!

「こうなってくると近藤さんたちとはなんか切っても切れねぇ縁を感じるなぁ」

永倉が前も隠さず首にタオルをかけ俺の肩に腕を回してくる。

「さ、土方さんも脱いだ脱いだ!」

空いているロッカーを開けて原田が待ち構え永倉に肩を組まれて進められる。

「わ…、わかったから先に行っててくれ…」
「なぁんだよ、恥ずかしがってんのか〜?いいじゃねぇか男同士、隠すこたねぇよ〜」

こいつ…、完全に酔ってやがる…。目がいやらしすぎる!

「あ〜、すんませんねぇ土方さん。こいつ酔ってるんで。別に厭らしい事しないと思うんで安心して脱いでください」

いや、つうかお前も酔ってるだろう原田!

「いや、ほんとにわかったから先行っててくれ」

永倉の腕を振り払い、原田と永倉まとめて温泉の入口を開けて放り込む。

「ひじかたさぁん!早く来てくらさぃよ〜?」
「土方さんのご来店、心よりお待ち申し上げます!」
「デカイ声で人の名前連呼すんじゃねぇ!」

屋内浴場に俺の怒鳴り声が反響した。
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