平助の母親

□32.
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☆★近藤さんと永倉さんは、本当に思いのままに動いてくれるから有難いです。★☆QLOOKアクセス解析





大の大人が四人並んでベンチに座ってソフトクリームを食べる…。


散策コースを行き交うやつらから言いようもない視線を感じるのは俺の気のせいか?
いや、気のせいなんかじゃねぇ…。

散策コース側に座る原田は通行人に対して手を振り返したりしてやがる…!
これだからチャラ男は……!
俺らは見せもんじゃねぇんだ!やるなら一人でやりやがれっ!!!

なんておとなげもなく言える訳ねぇし…。
近藤さんはでれでれ鼻の下伸ばして名前の顔をガン見してるし……。

はぁ…。
そんな奴らに背を向けるようにベンチの端に腰掛けコーンの最後を噛み砕く。
コーンの包み紙をくしゃっと握ると、通行人に手をふっていた原田が名前に向き直り話しかける。

「どうだ?少しは良くなったか?」

?、なんの話だ?
そう思うも俺は奴らに背を向けたまま。
隣に座る近藤さんが名前に訊ねる。

「ん?なんだね?何かあったのかい?」

近藤さん…。名前に関することは何一つ聞き逃せねぇって気迫が半端ねぇよ…。

「あ、いえ、そんなお話しするほどたいした事じゃ…」
よほど聞かれたくないのか、手をブンブン振って何でもないと否定するが、そんなの余計に近藤さんの好奇心を刺激するだけだ。

「原田くん、」
名前から直接聞くより原田から聞こうと名前の頭上から原田に顔を向ける。

「いやぁ、こいつ、バーベキューしてたら口の中やけどしちまって…。それで冷たいもんでも食わせようかと思って…」
「は、原田さんっ!」
もぉ!言わないでくださいよっ!とわぁわぁ騒ぐ名前を後ろから心配そうに
「そうだったのか!それはさぞ痛かっただろう」と近藤さん。

つうか口の中やけどって…。
どんだけがっついたんだ?

「ぶっ……、くくっ…!」

がっついてやけどして跳びまわる名前の姿が直ぐに思い浮かび、思わず吹き出してしまう。

「なっ!?何がおかしいんだ、トシ!!」
「!!!」
いきなり吹き出した俺に驚いて振り向く近藤さんとみるみる真っ赤になっていく名前。

「くくっ…!だってよ…、口ん中やけどって、子供かよ…」

名前に視線を向けて笑いをこらえながら言うと今日初めて面と向かって名前の顔を見て会話したことに気がつく。

「いや、これは…、俺が焼き上がったばかりのをこいつの口に放り込んじまったからで…。ちゃんと冷ましてから食わしてやりゃあ良かったんだ…。ホントすまなかったな。」
「いえ、もう大丈夫ですから。口の中なんて直ぐに治りますし」

情けない顔でソフトクリームをぱくりと食べる。
そこで終わる会話かと思いきや、又も近藤さんがブッカケル。
「つまり何かね?原田くんが苗字さんにその、…あ〜んとした…、ってことじゃないのかね、これは!?」

最後の方は気持ちが昂ったのかがばっと立ち上がり原田と名前を見下ろす。

「や、俺も最初はそのつもりだったんだけど、こいつが…。一瞬で食い付くもんだからそんないいもんじゃないですよ」

はははと悪びれもせず、人指し指で名前のこめかみを突く。
押されて体を右に傾けながら「わぁもぉ!言わなくていいですって!!」とわめく。

「中身えのきだったもんなー。ありゃ相当熱いわ」
その光景を思い浮かべるようにはははっと笑い続ける原田。
「もぉー!その話はおしまいにしてくださいっ!」

真っ赤な顔で喚きソフトクリームにかぶり付く。
きっとやけどしたときも今みたいにかぶり付いたんだろうと思うと、尚更子供かよ…と笑いが混み上がってきて組んだ脚に肘をのせ前屈みの状態で顔を伏せて笑いを噛みしめる。

「ひ、土方さんも…、笑いすぎです!」

小刻みに震える俺の肩を見てプリプリ怒る。

「す、…すまねぇ…、くくっ…」
顔を少しだけ傾け名前を見れば、口を尖らせ、むくれ面。

「ブハっ!」

なんつー顔だよ!こらえていたものが一気に吹き出し堪えきれなくて盛大に笑う俺に近藤さんが驚きつつも
「と、トシ!笑いすぎだぞ!苗字さんがかわいそうじゃないか!?」
と名前の前に膝まづいて名前の肩に手をおく。

「苗字さん、それで、もう口の中は大丈夫なんだね?」
「は、はい。へいきです。」
「そうか、それならよかった。せっかくのキャンプに痛い思いをしていたら気の毒だからな…。あいにく石田散薬も持ち合わせていないし…」
いやそれ効かねぇから。
「(石田散薬?なんだろ、聞いたことないや)いえもうほんとに大丈夫です。それより原田さん、そろそろ戻らないと私たちのお昼ご飯、なくなっちゃうかも!」
「お、そうだな。んじゃ、行くとするか…」

原田が立ち上がり、続いて名前も立ち上がると、名前の前に膝まづいていた近藤さんも立ち上がる。

「もう行ってしまうのかね…」

肩をしょんぼり落として悲しそうな顔をする。
……、次に出る行動がわかるのが怖い…。

だが、意外にも近藤さんが声を発する前に原田の口から近藤さんが今一番喜ぶであろう言葉が発っせられる。

「近藤さんも良かったら一緒にどうですか?」

その一言で瞬時に大輪の向日葵が咲き誇ったような笑顔で蘇る。

「い、いのかい?俺たちがお邪魔しても…?」

顔を赤らめドキドキの近藤さんに名前と原田は顔を見合わせ眉を下げて笑うと
「あんな悲しそうな顔の近藤さん置いて、俺たちだけ楽しめないですよ」
「さ、急いで戻りましょう!早く行かないと食べ物なくなっちゃう!」

土方さんも!と名前に手招きされてベンチから立ち上がる。

思わぬ事になったが、こうして名前を見ていられる事に近藤さん同様嬉しさを感じ、ふっと人知れず笑みを浮かべて三人の背中を追いゆっくりと歩き出した。
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