平助の母親

□28.
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えーと…。
とりあえず調理台の上に袋に入った食材を並べてみる。
普通の焼き肉って言われたけど…。
玉ねぎはまぁ、輪切りだよね?うん。
とりあえず、原田さんが来る前に、野菜の皮を剥いておこう!そうしよう!

バーベキューとか、そういったアウトドアの経験が殆どないに等しいから、普通と言われても何が普通で正解なのかわからない…。

せっかくの食材を間違った切り方でみんなに迷惑かけちゃいけないし…

そう思うと、なんだか申し訳ない気分になってくる。
もくもくと野菜の皮を剥いていると「おっ、やってるな」と原田さんがやって来た。

「あ!原田さん、あの、わたしやっぱり切り方わからなくって…。まだ皮しか剥いてないんですけど…」
「あぁ、いぃよ、どんなでも。食っちまえば同じだろ?」

そう言って皮を剥いて洗っておいたニンジンをザクッと切る。そんな原田さんをみて、

「あ、じゃあなんでもいいんでしたら…」
アスパラの皮を剥いてベーコンを巻き付ける。

「はい!こんなんどうですか?」
一本まるごと切らずに巻き付けただけの物を見せつける。
「おっ!いいじゃねーか、豪快で」
「ふふ!やった!」
褒められて次々とアスパラにベーコンを巻き付ける。

「じゃあ、お次は…」
薄切りのお肉を一枚ずつ広げてチューブのニンニクと生姜を塗りつけ塩コショウを振りかける。そこに榎茸をのせてくるくるくる〜!
「はい出来ました〜!」

さてさてお次は〜
やってくうちに段々楽しくなってきて気がつかないうちに鼻歌を歌いながら作業を進めていた。

「ふふ!楽しいですね!」
「あぁ、そうだな」

隣で並んで作業する原田さんに言うと原田さんも楽しそうに応えてくれる。

「わぁ!すごい!大きなエビ!それにホタテ貝!すごいすごい!これはそのまま焼いて食べた方がいいですね! 」
「あぁ、そうだな」
「あ!焼きそばもあるんですね!じゃあ焼きそば用にキャベツとニンジン、それからお肉も!人数が多いからたくさん切らなくっちゃ!」
袋からキャベツまるごと取り出して、ふと原田さんを見ると原田さんもわたしのことを見ていてパチッと目が合う。

「あ、あの、何かおかしかったですか…?」
「いや、何も?」
「そ、そうですか…?」

明らかに笑ってるのに…。何もって言われちゃったらそれ以上聞けないし…。
なんかおかしかったかなぁ…?

「やっぱり料理ができる女ってのはいいもんだな」
「え…?」
「いや。俺らがやるバーベキューなんてのは殆ど切って焼くだけみたいなもんだったから、こんな、何かと何かを合わせてひとつの食材にするなんて発想なかったからな。やっぱ女が一人でもいるといないとでは違うわ」

私が下準備した食材の並ぶバットを見て原田さんが感心して言う。
「あ、いえ…。すいません、勝手に進めちゃって…。せっかくのバーベキューなのに家庭料理みたいになっちゃたら雰囲気台無しですよね…」

既に形成された食材を見て、勝手もわからないまま自分の暴走を反省していると「なに謝ってんだよ」と笑われる。

「せっかく褒めてやってんのに謝られちゃ敵わねぇよな。」
「す、すみません…」
「だから、謝んなって!」
「あぅ…。」

そんなやり取りをしつつ、徐に原田さんが追加で持ってきた焼おにぎり用の味噌を手に取って何かを閃く。

「そうだ。」
「?」
「夜はこれで味噌汁作ってくれよ!」
「お味噌汁…、ですか?」

キャンプとお味噌汁が結びつかなくて思わず聞き直してしまう。

「あぁ、夜はまだ冷え込むだろうし、暖まるだろ?」
「なるほど!確かに冷えそうですもんね!でも、えっとお出汁はどうしようかな…」

うーんと考え、そうだ!と閃く。
「お出汁はないけど、このお肉と野菜をたくさん入れて、豚汁なんてどうですか?」
思い付いたままに提案すると、原田さんは「すげぇな」と感嘆を漏らして

「やっぱり普段から料理やってると思い付くもんなんだな。すげぇや」
夜が楽しみだぜ!

なんてにこにこしながらおにぎりに調味料を合わせた味噌を塗っていく。

「あ!原田さん!おにぎりのなかに一つだけ、これ入れちゃいません?」
そう言ってわたしが出したのはチューブのわさび。

ふふっと小さく笑って顔の横でチューブを振ると、原田さんもニヤリと笑って
「いいね。おまえもなかなか面白いこと考えるな」
とわたしからチューブを受け取りおにぎりのなかに注入する。

「ふふふ!」
「これ食うの、大体誰になるか想像つくのが嫌んなるぜ」
二人で顔を見合わせて吹き出す。

「怒られちゃうかな?」
笑いながら言うわたしに
「発案者はお前だからな」
と原田さん。
「えー!でも実行犯は原田さんでしょ?」
「な!お前、卑怯だぞ!」

やいのやいのしているうちにバーベキューの準備が完了したのか永倉さんがわたしたちの様子を見にやってくる。

「おぉーい。そろそろ…、ってぇ!なぁーに二人で楽しそうにしてんだよ!」

俺も混ぜろ!とわたし達の間に割って入ろうとしたけれど、原田さんに食材を並べたバットを目の前に差し出され、危うく激突する前で止まる。

「先ずはこれから焼き始めといてくれ。こっちも片付け次第戻るからよ。」

原田さんから受け取ったバットを両手に持って「なんだよ俺だって名前ちゃんと一緒にいたいってのによ…。」とぶつくさ文句を言いながら戻っていく。
その様子を二人で笑いをこらえながら見送って、ブハッと吐き出す。

「さ、俺たちも片付けて行こーぜ」
「はい!急ぎましょう!」
わさび入りの焼おにぎりを他のと見分けがつかないようにバットに並べてわたしたちも急いで河原に戻っていった。



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