平助の母親

□28.
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☆★張り切る永倉さん、見せ場はあるのか!?★☆QLOOKアクセス解析





駐車場に集合した四台の車のうち、原田さんの車に全部の荷物を積み込み、先にキャンプ場となる河原に移動する。

わたしたちは原田さんの車が行った後をそれぞれに談笑しながら歩いて移動する。

「いやぁ〜!それにしても、今日はサイコーだな!天気はいいし、空気も旨い!それに何より名前ちゃんがいる!」

サイコーだぜ!と子供のようにはしゃいで踊るような足取りの永倉さんの後を先頭に、私と井上部長、その後に島田さんと山崎さんが並んで歩く。

「永倉くんは余程苗字さんの参加が嬉しいんだねぇ」
「それはそうでしょう。苗字さんの歓迎会ができないと嘆いていたところに企画された今回のキャンプに、その苗字さんが参加してくれたのですから」

わたしがいるのに構わず永倉さんの気持ちを微笑ましく話す井上部長と島田さん。

「あはは…。そんなに歓迎されるとなんだか落ち着かないです…」
あんまり期待されても…と困って言うと後ろから凛とした、かといってそれほど大きくない声で山崎さんが話し出した。

「ここへ向かう道中、永倉さんはずっとあなたの事ばかり話していました。あなたとどう接するか、何を話せば盛り上がるのか…など。」

スッと目を細めて向けられた視線に思わずビクッとしてしまいそうになる。

「そんな…、普通に接してくださればいいですよ…。ね?井上部長!」
一番親しい井上部長に話を振る。

「うんうん、普通が一番!無理におもてなしされても恐縮させてしまっては元も子もないからね。とは言え、永倉くんの気持ちもわからなくはないけどね」
にっこりと温かい笑みを浮かべながら永倉さんを見る。

「誠自動車スタッフみんな、あなたの入社を歓迎しているんですよ」
島田さんも永倉さんに目を向けて微笑みながら井上さんの言葉に続く。

「そう言っていただけると嬉しいです。私も今のお仕事、とても楽しいですし、職場の雰囲気も大好きです!」

井上さんも島田さんもほっこり微笑んで、私もつられて笑顔になる。

「おぉーーーい!早くこいよー!」

河原で一足先に到着した原田さんの車の荷台を開け放ち、荷物を降ろす原田さんと、そこに到着した永倉さんが大きく手を振っている。

「はーーーい!」

わたしも大きく手を振って応え、永倉さんの元へと走り出す。

「ははっ、みんな元気だねぇ」
「俺たちも行きましょう!」

島田さんの言葉にみんなが「おぉ!」と走り出す。

誠自動車のみんなはきっとどこの組織にも敵わないくらい結束力が強い。
だってみんながこんなにキラキラの笑顔でいられる会社ってそうそうないもの。
ここの一員になれたことに感謝して、今日と明日のこのキャンプ、しっかり楽しんで親睦を深めなくちゃ!




「先ずは何より、テントの設置だな!」

永倉さんが張り切ってスタッフみんなに指示を出す。
設置するテントの数は三つ。
わたしも設置のお手伝いに参加しようと永倉さんの元に行くと、永倉さんの隣にいた原田さんに声をかけられた。

「おっと、苗字はこっちで俺と一緒に昼飯の支度だ。」
「そうそう、名前ちゃん!ウマイの頼むぜぇ!」
「え?あ、はい…」

テントの設置なんてしたことなかったから、少しだけでも参加したかったのにな…。
思いが顔に出てたのか、車からバーベキューセットを降ろす原田さんに笑われる。

「おいおい、テント張るのがキャンプの醍醐味って訳じゃねぇんだぜ?お前にはちゃんとやってもらうこと分担してあるんだから」

着々とバーベキューセットとテーブルや椅子を組み立てていく原田さんになにも手を出せずにただ突っ立っているだけのわたし。

「え、えっと…。じゃあわたしは何をしますか?」

テキパキと作業を進める原田さんにしどろもどろで訊ねると、私の聞き方が可笑しかったのか、くくっと笑って作業の手を止めて、車からクーラーボックスを取り出す。

「じゃあわたしはこの食材をあそこの調理場で洗って食べられるようにしてきてください。」

クーラーボックスから野菜やお肉、海鮮物が入った袋を取りだし、まな板、包丁、切ったものを入れるステンレスのバットが入っている手提げを差し出す。

「え、えっと…、切り方とかってあるんですか?」
差し出された物を受け取りながら訊ねると、
「いや、普通の焼き肉と同じだ。てきとーでいいよ。」
俺も後でそっち行くから、と頭をポンとされて送り出される。

うーん。普通でてきとーか…。



ほんとに適当でいいのかなぁ?
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