平助の母親

□27.
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高速道路を四台列なって走り抜け、中休憩を挟むことなく飛ばして着いた所は隣県の有名リゾート施設。


澄んだ空気と水に恵まれたこの辺りは季節によって様々なレジャーが楽しめる。

川で泳いだり、河原でキャンプやバーベキューを楽しんだり、白樺の立ち並ぶ林や湿原を散策して自然とふれあったり、小さな牧場で牛の乳搾りやハーブで手作り石鹸だとか、硝子細工やろくろ体験ができたり、林の向こう側にはゴルフコース、巨大プール施設を備えたリゾートホテル(温泉やグルメもかなり有名)、冬にはスキーも楽しめちゃうという、
とにかくいつ来ても飽きのこないなんでもありの日本最大級のリゾートテーマパークなのである!


という、駐車場に建ててある案内看板を前に誠自動車スタッフが各々の車から集合中。

あまりの内容のすごさにぽかーんと口を開けて看板を見上げていると

「ははっ、どうだ、スゲーだろ?」

と言いながら横に立つ永倉さん。
それに続いて原田さんもわたしの隣にやって来て笑う。

「お前がえらそーにゆーなよ、新八」
「なんだよ左之!イーじゃねーか!ここに決めたの俺なんだしよ!」
「決めたのはお前であってもスゲーのはお前じゃねぇ」

ギャンギャン騒ぐ永倉さんと余裕の笑顔の原田さん。
間に挟まれたわたしはそこからすり抜けて井上部長の所に行きたいのに前は看板、後方左右は仲良しコンビ。
逃げ場なし。
うーーーー。
仕方ないのでもう一度看板に目を向ける。

リゾートホテルかぁ。そういえば、昨日先生、近藤さまのお付き合いでリゾートホテルに宿泊するって言ってたっけ…。
ここにもリゾートホテルがあるんだって、先生。
場所は違ってても同じような所にいるのかと思うと、なんだかキュンとしちゃうな。
先生、今、どこにいますか?
昨日会ったばかりなのに…、
もう会うことはできなくなるって言ったばかりなのに…。

会いたいな…。
声、聞きたいよ…。


先生の事を思って看板に描かれているホテルのイラストを見つめていると、不意に原田さんの声が私を現実の世界に引き戻す。

「どうした、苗字?もしかして、ここに泊まりたかったか?」

済まねぇな、キャンプで。
とわたしの頭に手を乗せてポンポンとする。

「そうなのか名前ちゃん?やっぱ女の子に野宿なんて野暮だったか…?」

バンダナを巻いた頭の後ろをガシガシ掻きながら申し訳なさそうな顔をするので慌てて永倉さんを見上げて手を振って否定する。

「そ、そんなことでないです!わたし、キャンプなんて学生のときに一度学校行事でしかしたことがないので…。逆に皆さんの足手まといにならないか、そっちの方が心配です」
私みたいのがついてきちゃって、逆にすいません。
なんて笑って手を合わせて言えば、

「なんだよ、んなこた心配要らねぇよ!俺が手取り足取り腰取り教えてやるよ!」
「ばーか新八。苗字、今回はお前の歓迎会でもあるんだから、いろいろやんなくたっていいんだぜ?面倒なことは全部俺らがやってやるから、お前は楽しむことだけしてりゃいいんだよ。」

優しい眼差しを向けて原田さんは言ってくれたけど、わたしは大きく首を横に振って

「いいえ!それじゃあキャンプに参加したことになりません。できないことばかりかも知れませんが、せっかく誠自動車の一員として連れてきていただいたんです、私にもいろいろお手伝いさせてください!」
しっかりと二人の顔をみて言えば

「ぃよく言った名前ちゃん!偉い!よぉーし!この俺についてくりゃあ間違いねぇ!俺が立派なキャンプマスターにしてやるからな!」
任せとけっ!と大きな胸板をドンと叩いてにかっと笑う。

「はいっ、永倉先生!」

二人で「おぉーーー!」と雄叫びと拳をあげて輪になり始めた参加者の中に混じっていく。

そんなわたしと永倉さんの後をじっと見つめたままの原田さんに永倉さんが大きく手を振って早くこいよーと声をかける。

はぁっと大きなため息をついて、こちらへゆっくりと歩いてくる原田さんは、呆れた顔をしていたけれど、どこか憂いを帯びた表情だったように思えたのは気のせいだよね…。


Next→28.張り切る永倉さん、見せ場はあるのか!?
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