平助の母親

□25.
3ページ/3ページ

QLOOKアクセス解析





「この俺がこんなになるなんてな」

食事がおわり、先生ご自慢のソファーに二人ならんでのんびり寛ぐ。
私の肩に腕を回して私を抱え込むように肩を抱く。
先生の左胸に頬をくっつける姿勢になり、先生の心臓の音がよく聞こえる。

肩を抱く左手でわたしの頬を撫で、右手で頭を撫でては髪を掬ってキスをする。

「ふふ、わたしもそう思います。学校で見た先生とはまるで別人ですね。」

クスクス笑うわたしの顎をクイっと掴みあげ、「笑いすぎだ」とムッとした顔でおでこをくっつける。

「ふふ、すいません」

わたしから唇をよせて口づけすると一瞬先生は目を見開いたけど、すぐにキスに応じてくれる。

「おまえはかわいいな」

先生の口から改めてかわいいなんて言葉が紡がれるのが意外すぎてキョトンとしてしまう。
「誰にも見せたくねぇよ」
ぎゅっと抱き締められる。

抱き締められたままで先生は明日からのキャンプのことを心配して話し出す。

「お前みたいなかわいい女がひとり、男供とキャンプなんて、おれぁ心配でしょーがねぇよ」


どうしても行くのか?
また切ない眼差しでわたしを見つめる。

うぅ…、その切ない瞳は反則ですって…。

「う…、い、行きますよ?平助にも付き合いは仕事の内だって言われてますし…」

先生の目を見ないように答えると
「原田によろしくなって言われてたしな」と低い声で呟く。

そういえば、原田さんから告白されていたことを思い出す。
原田さんから告白されたときは、あんなにドキドキしてどう対応すればいいのかさえわからないくらいパニクってしまったのに…。
男の人に対する免疫がなくて見つめられるだけでドキドキしてたはずなのに、先生とはパニックになるほど慌てることはなかった。

どうしてだろう…。

先生にはトキメキよりも安心感があってドキドキも心地いいし、何よりも心が満たされる。

先生は千鶴ちゃんから原田さんがうちに来たことを聞いていて、千鶴ちゃんがどういう風に先生に言ったのかはわからないけど、先生は何度も千鶴ちゃんがわたしのことを心配していたと言っていたから、きっと原田さんのわたしに対する気持ちに気付いている。

もし、逆の立場で先生のことを好きだと言う人がいるグループに先生が泊まりで出掛けるなんて事になったら…。

わたしだったらきっと先生が帰ってくるのを待ってる間、心配で何もできないと思う。
それなのに、わたしは先生を置いてキャンプに行っても良いのかな…。

顔を上げて先生を見上げると、先生はずっとわたしを見つめていた。

「どうした?」

わたしの不安な気持ちを察してくれたのか、優しく頭を撫でてくれる。

「…あの、わたし…、やっぱりいかない方が良いのかな…。」

呟くように言えば先生は頭を撫でながら、ため息混じりに「そうだな…」と漏らす。

「本音を言えば俺はお前を目の届かないところには行かせたくねぇ。ずっと俺の側に置いて誰にも触らせねぇように大事にしまっときたくらいだ。」
フッと笑いながら冗談っぽく言って私に優しい眼差しを向ける。

「だが、お前にはお前の生活がある。それを俺が束縛していい理由なんて何処にもねぇ。平助の言う通り、付き合いも仕事の内ってのは間違っちゃいねぇ。付き合い次第で職場の居心地も変わってくるしな。」
コーヒーを一口含む。

「お前のことを思えば気持ちよく送り出してやらなきゃとは思うんだが…」

マグカップを置いてわたしを抱え込むように足の間に座らせると、背中に伝わる先生の体温と胸の鼓動。

「おまえは可愛い過ぎるから」

ぎゅっと両腕に力を込めて後ろから抱き締められ、わたしの左頬に先生の右頬が密着する。

「他の男に流されたりするんじゃねぇぞ」
ちゅっと頬にキスをして、首筋に顔を埋める。

「…先生」

大丈夫。わたしが一緒にいたいと想うのは先生だけ。

どれだけ素敵な言葉を並べられてドキドキしたとしても、先生がくれるドキドキみたいに心地いいのなんて他にない。

だから、心配しないで。



Next→26.これからのふたり
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ