平助の母親
□24.
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「う、ん…」
いつの間に眠ってしまったのだろう。
うっすらと視界をこじ開けると首をずっと同じ姿勢で傾けていたせいか左肩が凝り固まってしまっている。
それになんだか頭のてっぺんにのし掛かる重み…。
「うん…?」
はっきりクリアになった視界に映ったのは先生の膝の上でしっかり繋がる私の左手と先生の右手。
繋がっているというより、先生の右手が私の手をつかんでるといった方が正解。
「ふぁあっ!」
慌てて手を引き離そうとするとぎゅっと握られて捕まる。
「ん…」
先生の呻き声にハッと顔をあげるとまぶたを重そうに持ち上げる先生のきれいな顔が目の前に映る。
「ふぁぁあぁあっ!」
「んぁ…?なんだ、もう終わっちまったか」
私の頭に乗っていた先生の顔が離れると、先生は私の手を握っていた右手を離しリモコンでスタートメニューの写し出されている画面を消した。
「話し半分で寝ちまったみたいだな。大したことなかったな」
なんかやたら肩こっちまったし…とぶつぶつ言いながら映画を軽く批判する先生の後頭部には何気に寝癖がついていて、それが妙におかしくて、ついさっきまで慌てていたはずなのにプッと吹き出してしまう。
「あぁ?なに笑ってんだよ?」
じと目で振り返り私を睨む先生。でも寝癖がついてるせいかちっとも怖くない。
「ぷふっ、だって…、先生寝癖!寝癖ついてるよ!ふふっ、ほんとかわいぃ!」
笑いながら先生の寝癖をツンツンすると目を見開いた先生は顔を少し赤くして、ムッとしたかと思ったら一瞬で口の端をニヤリと持ち上げ私の左側に右手を着く。
急に近づく先生の不敵な笑みとソファーに押し付けられる格好になったわたしはどうにも逃げることができずに目を見開いて先生を見上げる。
私の不安に揺れる瞳は先生の切れ長の瞳にしっかりと捕らえられてしまい、
先生の左手が私の顎を捕らえると完全に逃げ場がない。
「あ、あぁあの先生!」
な、何っ!?どうしてこうなった!?
目を開いているのにもう何も見えない。
パンク寸前の私にフッとかかる吐息。
「かわいいのはおまえだろうが」
吐息混じりに聞こえた台詞にハッとした瞬間おでこに押し付けられた先生の唇。
「お前がかわいいから、俺は普段の俺じゃいられなくなる」
離れた唇から紡がれる言葉。
先生の瞳が見たこともないくらい切なさを帯びていて、わたしの瞳を捕らえるから、わたしはその視線をそらすことができなかった…。