平助の母親

□22.
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とりあえず、この一方通行の車道に車を止めたままでは通行の妨げになるからと、名前の家の車庫に入れる。

その後リビングに通されると平助の朝食後だと思われる食器がダイニングテーブルに乗ったままだった。

「いろいろ散らかっててすいません」

そう言って手早く片付けを始める名前。
ソファに腰掛けその様子を見ていると、ふと名前と目が合う。

「……。すいません、慌ただしくて…。」
「いや、いきなり来たオレが悪かったな」
「あの、とりあえずコーヒー淹れましょうか?」
「あ、あぁ、悪ぃな…」

メガネにノーメイクの名前の顔を見ていると、いつもの名前と違う雰囲気に調子が狂っちまう。

個人懇談で初めて見た時も思ったが、ベースの顔が幼いから、今日の名前のような格好は余計に幼く見える。
まるであか抜けない中学生(読書好き)だ。

これで髪型がみつあみお下げだった日にゃあ…。

自分でした想像におもわず口を塞いで笑いがこみあがる。
肩を震わせ顔を下げて笑うオレを不思議そうに見ながらローテーブルにマグカップをコトリと置く名前。

「?どうぞ?」
「あ、いや…。すまねえな…」
なんとかこみ上げてくるものを抑えマグカップに口をつける。

そんなオレをまだ不思議そうに見つめる名前。

「あ、あの、それで私に渡すものって一体…?」

ローテーブルの前に正座してお盆を膝の上に乗せ訊ねる。
「あー、………。おまえ、このあと予定は?」
マグカップを置いて逆に訊ねると

「え、いやあの、…昨日お話ししたと思うんですが…?」
少しムッとしたようにオレを上目使いで口を尖らせじと目で見る。

「いや、悪ぃ。そういうつもりで言ったんじゃねぇよ。なんも予定ないんだったら俺んちに来ないかって誘おうと思ったんだよ」
「えっ!?」
「DVD、今から取りに戻ってもいいんだが…、持ってくるの忘れたオレが言うのもなんだがめんどくさくてよ。」

フッと笑って悪ぃなと俺が呟けば名前は眉を下げて小さく息を吐く。

「もぉ…。ほんと先生っていきなりですよね。」

呆れた声を出してゆっくりと立ち上がると
「予定がないって言ってもお掃除やら洗濯やら、やらなきゃならないことがあるんですからね。」

簡単に済ませますからそれまで待っててくださいね。
そう言ってオレを残して家事に取りかかった。


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