平助の母親

□21.
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☆★土方先生行きつけのお店とは?★☆QLOOKアクセス解析





「いらっしゃいませえ〜!」
先生の背中越しに元気な声が響く。

先生のあとに続いて店内に足を踏み入れると、カウンターの奥の暖簾から着物姿の凛とした女性が土方先生を見て、目を見開く。

「あらぁ、トシ!久しぶりじゃない!」

そういって先生の進む先のカウンターの前に立ち、おしぼりを用意する。

「あぁ、久しぶりに飯食いに来た」

先生が椅子に座るのを見て、私も後について隣の椅子にカバンを置いて立つ。

「あらあら、久しぶりに来たと思ったらなぁにー?こんな若い子連れてきちゃって!だれだれ?紹介しなさいよ!」

着物の女性がニヤニヤしながら早口で捲し立てる。

「こいつは…」

先生は私の顔をチラリと見上げて、説明するかと思ったけれど、

「なんだっていいだろ!それより飯だ!」

ツンと顔をそらして壁にかかるお品書きを見上げる。

「はいはい、相変わらずすぐ怒るんだから」
女性は呆れるでもなくそう言うと場所を移動してカウンター越しに作業を始める。

「好き嫌いはねぇか?」

そういって先生は振り返り、未だに椅子に手を掛けたままの私を見上げて、
「いつまで突っ立てるつもりだ?早く座れ」
カウンターに乗せられたおしぼりに手を伸ばし、私の前に差し出す。

「あ、は、はい」
おしぼりを受け取り、椅子に腰かける。

「で?好き嫌いは?」
「あ、いえ、何でも食べます。」
再度聞かれてそう答えると、フッと笑い、
「何でも食べます、か」と呟く。

「あらあら、トシがそんな顔で笑ってるなんて、珍しいこともあるもんね〜」
はいどうぞ、と大きめのどっしりとした湯飲みに入った暖かいお茶を差し出される。

「あ、いただきます」
湯飲みを両手で受けとりペコっと頭を下げてお礼を言うと女性はキョトンとして、フッと微笑む。
「若いのにちゃんとしてるのね。」
どこで知り合ったのよ!とまたニヤニヤとして先生をつつく。

「うるせぇな、さっさといつも通り適当に出してくれ」
女性の冷やかしをシャットアウトしてズッとお茶を啜る。
「やぁね〜、照れちゃってさ!ね!」
女性は私にウインクして暖簾をくぐって厨房へと入っていった。
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