平助の母親

□20.
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もぉ、いったい何だったの? ていうか、なんで学校の先生がこんなところにいるのよ。でもって、わたしがとろうとしたやつ横取りしたかと思ったら投げつけたりして …!

ブツブツブツブツ他のDVDもいろいろ物色して棚を見ながら歩いていると後ろから「クククッ」と小さく笑う声が聞こえる。



「!?」



勢いよく振り向くと目の前が真っ黒!と思ったら顔面に衝撃。



「わぶっ!」



ギュッと固く閉じた目をそっと開いて見ると目の前にはネクタイ。
両肩をグイっと押されて視界が取り戻される。



「おまえなぁ…、そんな勢いよく振り返るやつがあるかよ」



顔をあげて見上げると眉を下げて苦笑いする土方先生。
とたんに顔がかぁーっと熱くなってしまう。



「な、な…、もぉ!なんなんですか!どおして後ろにいるんですか!?」



DVDをギュッと胸に抱きしめて文句を言うと、先生はわたしの抱き抱えるDVDに人差し指を乗せて、



「俺もこれを借りようと思ってたんだが…。」


そう言うと、目をスッと細めてわたしを見下ろす。



「え…、でも先生、ぽいって…。譲ってくれたんじゃないんですか?」


口答えしてるみたいでドキドキする。



「あぁ?そこまでわかってて、俺になにか言うことねぇのかよ?」



背の高い彼が見下ろした目にギロっと力を入れ、眉間にくっきりシワが入る。
ドスの効いた低い声で問いかけられ、わたしは完全に蛇に睨まれ震え上がるカエル。



「!!!っっ!!な、なんですかっ!?」


なんとか出した声は完全に震える。



「人にものを譲ってもらったら…?」



低い声で言葉の先をわたしに言うように視線で促す。



「……………、あ、ありがとう……、ございます……?」



震える声で答えるとDVDに引っ掻けてあった人差し指が離れ、そのままわたしの頭の上に大きな手が置かれる。



「わかってるなら最初から言っとけ」



フッと優しげな顔に変わり、大きな手がくしゃりと頭をなでる。



「は、はぃ…」



DVDで顔半分隠して返事する。
この人、ほんとに先生なんだな…と思う。
けど、なんで私が生徒みたいになっちゃてる?



「わたし、生徒じゃないんだけど…」



私が返事したらフイっと陳列棚へ顔を向け他のDVDを探し始めた先生にぽそっと呟く。
私の声が聞こえたのか、こちらへ顔も向けずに「似たようなもんじゃねぇか」と先生もポツリと呟く。



「ふふっ」


なぜか小さく笑ってしまう。



「………、なにがおかしい」


チラッとこちらを見下ろす先生の目。

「いえ、なんにも」


そういいつつ、自分でもなにがおかしいのかわからないけど、笑みがこみ上がってくる。
視線を下ろした先にあるDVDに手を掛けながらポツリと言葉がもれる。



「きっと先生のいろんな表情のせいかな」



ポツリ、
自分でも声に出したかどうかわからないくらい無意識に言葉がでる。

先生といると、こうして言葉を交わすようになったのがつい最近だなんて思えないくらい、
一緒にいて違和感がない。

基本、怖いってゆうのはあるけれど、たまに見せる優しい顔や、目を合わせないようにそっぽ向いたりする仕種なんて、可愛いとさえ思ってしまう…。

なんて言ったらどんな反応するのかな?
言ったらきっと怒られちゃうと思うけど、そんなやり取りも、土方先生となら楽しいんじゃないかな。

もっと、
いろんな先生を見てみたい。
こんな風にはしゃぐ気持ち、いつぶりだろう…。
しばらく感じた事のない浮かれた気持ちにおもわず笑みがこぼれた事に自分でも気付いていなかった…。
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