平助の母親

□18.
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「はぁ…、かぁちゃん…。
そんなことくらい、自分で言えよな。」

「えっ?」



平助を見るとまた頭の後ろで手を組んでため息を吐いて呆れている。



「かぁちゃんが子離れできてないのはよくわかってたけどさぁ…、
会社での集まりくらいちゃんと参加しろよな。せっかく誘ってくれてんだしさぁ。
オレと飯食うくらい一んちや二日飛ばしたってどぉってことないじゃんか。」



そういって千鶴ちゃんにチラリと目を向けると


「それにかぁちゃんいつも言ってんじゃん。千鶴に面倒見てもらってれば安心だ〜って。」



そう言われて千鶴ちゃんを見ると少しだけ眉を下げて何となく困っているような表情。



「会社の付き合いも仕事のうちなんだぜ。
いつまでも甘えたこといってねぇでかぁちゃんはかぁちゃんの付き合いを大事にしろよな」



そういって原田さんに近づき膝に手をついて屈み込み原田さんの顔を覗き込む。



「そういうことだから、原田さん。子離れできてねぇ母ちゃんだけど、思いっきり楽しませてやってください。」



平助の言葉に原田さんは顔をあげ優しく微笑むと、平助の頭をわしわし撫でまわし、
「おぉ!任せとけ!」と大きく胸を張る。



「なんだよ苗字!おまえより子供の方がずっと立派なこと言ってるじゃねぇか!」



とびきりスマイルの原田さんに誉められ平助は嬉しそうに「へへっ」とはにかみ鼻の下を人差し指で擦る。


「う、」


そんなぁ〜、へーすけ〜〜〜!と心の中で泣きながらも、平助の発言に頼もしさを感じる。
それ以上の寂しさもあるけれど…。

そう思って心で涙を流していると、原田さんは平助の頭をぽんぽんと叩き、



「じゃ、俺の用件は済んだし、ここらで失礼するよ」といって玄関の扉に手をかける。

すると平助が「えっ!?なに?もう帰っちゃうの?」と原田さんに声をかける。


えぇ!?


驚いて平助を見ると千鶴ちゃんも私と同じように驚いている。



「へ、平助くん…」



聞こえるか聞こえないか位の小さな声で平助の名前を呟く。
そんな千鶴ちゃんの呟きに気づくことのない平助は原田さんの手を取って



「おれ、もっと原田さんの話聞きてぇよ。上がってったらイーじゃん」


と引き留める。


「へ、平助、何言ってるの!?」
平助の手をとる。

すると原田さんは振り返りまた平助の頭をポンポン撫でて、


「ありがとな平助。おれもお前といろいろ話してみたいと思うが、明日もまだ学校だろ?」

と言い聞かせる。


「で、でもさぁ、ちょっとくらいどおってことねぇし、飯くらい食べてけばいーじゃん!」


食い下がる平助に原田さんがOK出すんじゃないかとヒヤヒヤで落ち着かない。
原田さんはそんな平助を見てフッと笑うと、


「今度のキャンプには一緒に行けねぇもんなぁ。また別の機会があったら必ず連れてってやるからさ?」


今日は気持ちだけもらって帰るよ。
そういって軽く手を上げ玄関の扉を開ける。



「あ、原田さん!送ってくださってありがとうございました!」


慌てて原田さんのあとを追い、原田さんを見送る。
運転席に乗り込んだ原田さんは窓を開けて顔を覗かせて私たち全員の顔を見回して、


「あぁ、おれも子供たちに会わせてもらって感謝してるよ。ありがとな。」


そういってエンジン音を轟かせる。

そして平助に向かって

「平助、ありがとな。お前と話せて良かったよ。」

と微笑む。


「おぅ!おれもかぁちゃんがどんな人と仕事してるのか知れてよかったよ。
おれ、なんか原田さんとはイー感じになれそうな気がする」


そういってニカっと答える平助。



「ははっ、そりゃいいや。じゃぁ、これから俺の事は左之って呼んでくれ。」


おれの仲間はみんなそう呼ぶからとウインクする原田さん。

すると平助は目を爛々と輝かせて「おぅ!左之さんっ!」と嬉しそうに答える。

なんだろう?
女には見えない男同士の絆みたいなものを感じる?
千鶴ちゃんを見るとそんな私の視線には気づかないようでなんだか複雑な表情で平助の後ろ姿を見ているようだった。
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