平助の母親
□17.
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☆★原田さんには油断禁物です。★☆
「なぁ、さっきの…」
運転席の原田さんが心配そうな声でちらりとこちらをみる。
「あ、あの、彼はその…」
説明しようと思ったけれど、朝電車で一緒になることしか思い付かなくて思わず口を閉じてしまう。
そんなわたしの様子を見て原田さんはふぅとため息をつく。
「おまえ…、自分の事どう思ってるかしらねぇが、どうみたって子持ちには見えねぇんだし、もうちっと用心した方がいいぜ?」
赤信号で止まり、右手をギアにのせる。
「用心って…」
原田さんの言ってることがいまいち理解できなくて復唱してしまう。
「隙があるっつーか、なんつぅか…」
いいよどむ原田さん。
「隙…?」
ますますわからない。
「なんにせよ、ただの通行人に声かけてそっから先を望むような男にロクな奴いねえんだから、さっきの奴は今後気を付けた方がいい。」
そういってギアを一速の位置に入れアクセルを踏む。
信号が青に変わり前をみる原田さん。
「………。」
原田さんの言った言葉に、なんの返事もできないまま黙り込んでしまう。
何て言っていいか言葉が見つからない。
黙ってしまったわたしに、なにか気まずい雰囲気を感じたのか原田さんが少し戸惑ったような声を出す。
「あ、いや。その…だな。」
いいよどむ原田さん。
「………。わたし、わたし、やっぱり頼りないんですかね?」
言っててだんだん悲しくなる。
「しっかりした大人に見えないから、…隙があるように見られちゃうのかな…」
自分でも人一倍しっかり者だなんて思ったことなんてないけど、だからといって隙だらけだとも思ったことはない。
でもそれは自分が自分の事をそう思っているだけで、人からの評価とは違うって言うのもわかってる。
人から見たらやっぱり、自分が思っている以上にぼんやりしているのかもしれない。
「い、いや、しっかりしてないとか、そうじゃねぇんだ。なんてゆーかその…」
いつもの原田さんらしくない様子に首をかしげて原田さんをみやる。
原田さんは困ったように眉を下げて微笑むとため息をついて、
「おまえはさ、男から見てほっとけねえっつーかさ…」
そこまで言うと、困ったような笑顔をニッとイケメンスマイルに変えて
「構いたくなるんだよ。おまえは!」
と右手を伸ばしてわたしの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「!あっ!やだもぉ!何するんですかっ!」
原田さんの手を払ってくしゃくしゃに乱れた髪を手櫛で直す。
ぷりぷりしながら両手で髪を整えていると、横から原田さんが吹き出す。
「ふっ。そぉゆうところがほっとけねぇんだよ」
と頭をポンポンする。