平助の母親

□12.
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本日最後の面談、平助の母親を待つべく平助の実力テストを始め、前年度の学年順位やその内容を纏めた資料を用意する。

すると廊下の奥から階段を駆け上がってこちらへ走って来るような足音が聞こえた。
下校時間も迫っているというのに…。
おれは教室の入り口をガラッと勢いよく開け怒鳴る。



「誰だ!こんな時間に廊下走りやがって!」

「うっひやぁっ!」



開けたドアの目の前で飛び上がる一人の女。
うちの生徒じゃねぇ…。


「あ…。あんたは………」


生徒じゃないことに気がつき、いきなり怒鳴ってしまったことに、少しだけ罪悪感のような戸惑いを感じ思わず呟いたが、よく見ると相手は高校生だか大学生のような年頃のなんだかあか抜けない感じの女だった。



「っす!すみません!二年B組はこちらの教室で合っていますかっ!?」



肩で息をして廊下を左右見回しながら尋ねる。


「あ、あぁ、ここであっている。あんたまさか…」



この時間にここに来る予定の人間はただ一人。
しかし、いま目の前にいる女はとてもじゃないが中学生の親だとは思えない。

身に付けているものはだぼっとした白のパーカーと細身のデニム。
化粧っ気ゼロで髪は前髪をあげてピンで留めデコ全開。
後ろは緩く一つに結っていて、ヘタすりゃこの学校に通っている生徒よりも垢抜けない身なり。

さっきまで面談していた他の親御連中とは何もかも全く違うジャンルの女が現れた。

………。

今目の前にいる女が現れるまで、近藤さんに見せられたあのディーラーのブログの写真がずっと頭から離れず、あの女が…、もしかしたらここに来るのではないかといううっすらとした思いが完全に消えた。



「二年B組…。時間は…、!やった、5分前!セーフだ!」


小さく小声でガッツポーズをしながら肩で息をする女。

………。

間違いねぇ。
こいつは間違いなく平助と同じ血が通ってる…。



「…。苗字さん、ですね。お入りください。」



静かにため息をつき冷めた口調で言うと、ビクッと小さく肩が跳ね、ガッツポーズだった両手の拳をキュっと胸の前で固く握りしめた。
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