平助の母親

□11.
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月曜日は毎週定休日。


午前中は平助を送り出したあと、家中の掃除と洗濯、部屋の整頓など、一気に片付ける。だから月曜日が良い天気だと家の中もわたしの心もスッキリ気持ち良い。
今日は平助の学校で個人懇談があるから一週間分の食材の買い出しはそのあとでいっか。

なんて思って時計を見るとお昼もまわって、そろそろごはん食べなきゃな〜と畳んだ洗濯物を持って立ち上がる。
バスタオルを脱衣所に置いてリビングに戻って来ると、充電器に差しておいたケータイが鳴っていた。

慌ててケータイを手に取り耳に当てる。



「大変お待たせ致しました、苗字でございます。」


慌てていたからとっさにお仕事用の台詞が出てしまった。
普通ケータイにかかってきたら「はい、苗字です」って出るもんだよね…。
すると電話口で一瞬怯んだような間があったあと、小さく咳払いが聞こえた。


「っ、うん、…。あの、苗字さんの携帯で間違いありませんね?」



低い声の男性からの電話。
そういえば慌ててでたから着信画面見てなかった…。誰?


「あ、はい。苗字ですが…。」


おそるおそる答えると相手はさっきよりもしっかりとした声色で続けた。


「わたくし、平助くんの担任をしております薄桜中学の土方と申します。」

「あっ!はじめまして。平助がいつもお世話になっております。」

ペコペコと頭を下げる。

この人が平助が言ってた鬼の教頭兼担任の…。
確かにこの声はちょっと怖いかも。
平助が以前「殺される!」なんて言ってたから、私までちょっとビビってしまう…。

すると土方先生はそんなわたしの様子にお構いなしに(電話だからわたしの様子なんて分かるわけないんだけど)話を続ける。



「本日平助くんの個人懇談を予定しておりましたが、平助くんから面談時間はお聞きになっていますか?」


相変わらずの低い声。


「あ…。あの、平助からは時間、聞いてなかったので、放課後、授業が終わる時間をみて伺おうかと思っていたんですが…。」


とビクビクしながら答える。こ、こわい。
すると電話口から「はぁ…。」っと盛大なため息。
ふぁあぁぁ〜〜〜!ため息つかれた!やだもう怖い!


「今回苗字さんからの希望日時の申請が遅れておりましたので、希望日の今日、一番最後の時間に組み込ませていただきました。ですので苗字さんの面談時間は夕方5時半となっています。他の親御さんの都合で月曜日は大変集中してしまいまして、遅くの時間になってしまったのですが。よろしいですか?」



再確認の意味を込めて聞かれているのだと思う。
でも、こちらが無理いって今日にしてもらったようなもんだし、先生の都合もあるだろうから私からは何も言えない。


「はい。その時間で大丈夫です。わざわざご連絡ありがとうございました。ご連絡いただいてなかったら、私ずっと待ちぼうけでしたね。」


苦笑いしてまた頭を下げる。


「では、本日五時半、お待ちしておりますのでよろしくお願い致します」

淡々と言う土方先生。



「はっ、はい!こちらこそよろしくお願い致します!」

そういってまた深々と頭を下げると電話は切れた。



はあ〜〜〜………。
平助、毎日こんな怖い思いしてるんだ。平助も大変だな〜。
のんきにそう思う私はもっと親らしくしっかりしなきゃいけないかな。
今まで結構学校のことは千鶴ちゃんに任せっきりだったけど、ちゃんと平助から学校でのこときちんと聞いて、会話を増やしていこう。

ふんっと鼻息を出して、やる気をみなぎらせ、「ごはんごはん」とケータイを充電器に置いて、キッチンへと向かった。
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