平助の母親

□8.
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そんなわけで、今僕はお店のキッズスペースで靴を脱いでいろんなおもちゃを広げてマッタリしている。

一くんは興味もないくせに展示してある車のドアを開けたり閉めたり、運転席に乗ってみたりと落ち着かない。

結局あのあと、お店のおじさんに声をかけられたから、遠慮なくお邪魔した僕たち。
だって、『いらっしゃい』って言われたら『こんにちは』てなもんでしょ?
おじさんの御厚意はありがた〜く受けなくちゃ。

おじさんは僕らをお店に招き入れると、


「このあと少ししたら人と会う予定だからあまりお相手できないけど、好きに見てっていいからね。何かあったら声をかけてくれて構わないからね」


と言って、何かの資料作りの途中だったのか商談スペースの大きな机に置いたノートパソコンの前に腰かけた。



「総司。いい加減帰るぞ。好きに見ていいとはいえ、仕事の邪魔をするわけにはいかん」



オモチャを一つ手に取るとカゴの中にしまい、真面目な顔で言う一くん。



「え〜。でも好きにしてていいって言ってたし、気にすることないよ。おじさんだって僕たちのこと気にせずにお仕事してるし」


大丈夫大丈夫。と僕が言っている間におもちゃはどんどんカゴの中に消えていく。



「バカを言うな。あの方はこちらを気にしていないようで、きちんと仕事をしながらこちらにも気を配っておられるのがわからないのか?俺たちがいることで100%の力を今の商談に発揮できなかったらどうする。俺たちが店にいることで少なからずこちらにも注意を払っているだろう。
総司。あんたはもっと自分以外の人間の立場や気持ちを考えるようにしたらどうなんだ。無神経にも程があるぞ」



最後に僕が持ってたピカチュウのぬいぐるみを取り上げると他のぬいぐるみが並べられている棚へと戻した。



「あ〜。もぅ、うるさいなあ。わかりましたよ。僕がいるだけで仕事の邪魔になるってわけ。一くんこそ、自分の言った言葉がどれだけ人を傷付けるのか自覚した方がいいよ。いくら僕と一くんとの仲だっていってもね」


親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ。
そう言って靴を履いて一くんの横をすり抜けて出入り口の方へ向かう。



「すいません、お邪魔しました」


商談中のおじさんに小さく声を掛けるとおじさんは椅子から腰を浮かせて


「もういいのかい?すまなかったねぇ」


と申し訳なさそうに笑う。


「いえ、僕たちこそお仕事の邪魔になってしまって…」


そう言って自動ドアの前に立つと扉が開く。


「また時間があったら、今度は試乗でもしに来たらいいよ」


店内から外に出る。振り返って「ありがとうございます」と笑うとおじさんも優しい笑みを浮かべて頭を下げた。




あ〜あ…。結局あの子は戻ってこなかったなー。
やっぱり職場に押し掛けるのはさすがにまずいかな。まだ話せるようになってたったの二日目だし。あのこの名前も知らないわけだし…。

あ〜!明日こそあのこの名前聞き出せたらいいな!


ってか明日僕学校休みじゃん!


うーん。休みに朝から電車ってのもなぁー。それにそこまでして付きまとうのもなんだか本当にストーカーみたいだし。
少しずつでいいから仲良くなっていこう。うん。

考えながら駅の改札を通り抜ける。




「あ。

一くん忘れてきちゃった。


ま、いっか。」
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