平助の母親

□7.
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☆★近藤さん、こんにちは。★☆QLOOKアクセス解析






「今のお時間、近藤さまはご在宅なんですか?」



運転中の原田さんに訊ねると、『そうか…。』と呟いて



「まだ顧客情報のデータ渡してなかったな。渡してたとしても全部把握するなんて時間もねぇしな」

と前を見ながら話す。



正直、一日の流れや、取り扱っている車種の名前やスペックを覚えるので一杯いっぱいで、お客様一人ひとりを把握するなんて当分無理そう…。



「顧客情報のデータみれば客の個人情報満載だからな。多分、研修期間済むまでは一部の情報までしか見られないだろうが、そのうち客の職業とかの細かい情報も見れるようになるかもな。ま、接客したり、客と俺らの会話を聞いてりゃいろいろ分かってくるだろうよ」



横目で微笑みながら『すぐに辞めるとか言うんじゃねぇぞ』と冗談っぽく笑う。



「で、だ。今から行くのは近藤さんの職場。近藤さん、中学の校長先生やってるから平日はいつも学校に引き取りに行くんだ」

「へぇ〜、校長先生ですか!近藤さまみたいな人が校長先生なんて、きっと学校全体、朗らかな感じなんだろうな〜」



いろいろ話しているうちに、車から見える景色が見覚えあるものに。



「あれ、この辺私の地元ですよ。この辺の学校なんですか?」


景色から原田さんに顔を向ける。


「ああ、もうすぐだぜ。この辺お前の地元かぁ。じゃあ、近藤さんとこの卒業生だったりして?」

「あ、いえ。学生時代の時は別のとこに住んでたので、違うんですけど…」



車が裏道に入ると学校の裏口から職員用の駐車場に入っていった。



「あれ?ここって…」



空いているスペースに車を停めると原田さんは車から降りて来客用のインターフォンを押す。



「誠自動車の原田といいます。いつもお世話になります。近藤先生のお車取りに来ました」



インターフォンから離れてこちらを振り向くと、私も降りるようにと手招きする。
慌てて車から降りて原田さんの少し後ろに立つ。


「あの、ここって薄桜中学校ですよね?」


原田さんの背中のシャツをつんつんと引っ張ってみる。


「ああ、なんだ、やっぱり地元だけあって知ってんだな」

「いえ、知ってるというより、うちの子ここに通ってるんです」



勤務中に思いがけず我が子と同じ場所にいるんだと思ったら嬉しくてニッコリ笑った。




「はぁっ!?」





苗字の言葉に思わずすっとんきょうな声が出た。
そんなオレの声にビクッと跳ね上がる苗字。


「うちの子っておまえ…。???はぁっ???ウソだろ???」


驚きのあまりに他に言葉が出てこねぇ…。


「あの…。原田さん?」

俺の少し後ろにいる苗字は不思議そうな顔でオレを覗き込む。

そんなところに「やぁやぁ、原田くん。いつも済まないねぇ」と近藤さんが職員用の出入口から現れた。



「あ…、あぁ、どうも近藤さん。車検の引き取りに来ました…。どこか気になるところがあればそこも点検しますが?」



とりあえず今は仕事だ。落ち着け、俺!

すると近藤さんは俺の後ろに視線をやり、
「いや、車について気になるようなところはないんだが…。後ろの方が例の?」



近藤さんの視線を受けて
「いつもお世話になっております。苗字です」
とペコリと頭を下げる。

すると近藤さんはつかつかと苗字の前に歩みより、ガシッと苗字の手を両手で掴んだ。


「いや〜。君が苗字さんか!いやはや、電話で受ける印象通りのべっぴんさんだ!君の対応は実に素晴らしい。いつも電話を切ったあとは清々しい気持ちで仕事に励むことができるんだよ。いや〜。ありがとう、ありがとう!」



近藤さんに掴まれた手をブンブン振られ、苗字の華奢な肩から腕が外れそうな程だった。
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