平助の母親
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☆★平助少年ピンチです。★☆
昼休み。母ちゃんの弁当をかきこんでから、クラスで仲のいい奴らと食後の運動にバスケをしに行こうと階段を降りている途中で呼び止められた。
「平助」
踊り場から声のした方へ顔を上げると、そこには担任の土方先生が立っていた。
「なあんだよ先生!早くいかねぇとコートとられちまうじゃねーかよ!」
その場で駈け足しながら悪態つくと、
「うるせぇ!んなもん他の奴らに任しときゃいいだろうがっ!んなことよりテメェ、いつになったら個人懇談の日程希望日のプリント持ってくるんだ?面談週間、もう来週に迫ってんだぞ!」
階段の上で仁王立ちしながら怒鳴る土方先生。
ヤベェ。そんなプリントあったかなぁ…。マジ覚えてねぇや…。
「す、すんません。まだ母ちゃんの仕事の都合とか決まってないらしくて…。なかなか平日休めない職場みたいでさー。…アハハ…。」
なんて誤魔化してみる。
すると土方先生の目がスゥっと細められオレを見下した。
「ほぉおー。なるほど。子供より仕事優先か。そりゃご苦労な事だな。子供のことほっぽらかして学校の連絡事項も耳に入らない。そんなんだから平助、お前みたいなちゃらんぽらんが出来上がるって訳だ」
「!…なんだとっ!」
いくら先生でも許せねぇ!瞬間湯沸し器みたいに一気に頭にきて階段を駆け昇ろうとした時、
「平助君のお母さんはそんな人じゃありません!」
廊下の横から千鶴が叫んで走ってきた。
土方先生の横まできた千鶴に
「千鶴、廊下を走るんじゃねぇ」と鋭い目を向けるが千鶴は怯む様子もなく、
「すみません、先生。でも私、土方先生のさっき言われたことがどうしても許せないんです。平助君の家の事情も知らないで、あんまりです!平助君も平助君のお母さんも一生懸命やってるんです!知りもしないのに悪くいうのはやめてくださいっ!」
そう言うと千鶴はスカートをギュット握りしめた。
そんな千鶴を見て土方先生は溜め息をついて、
「はぁ、悪かったよ。言い過ぎた。だが平助、お前のこないだの実力テストのちゃらんぽらんな点数を親にきちんと伝えなくちゃなんねぇ。さっさと親の都合聞いてこい。締め切りは明日までだからな!忘れたら家まで押し掛けるぞ!」
そういって廊下を歩いていった。
「平助君…」
千鶴が心配顔で俺のところまで降りてきた。
「ありがとな、千鶴。千鶴が来てくれてなかったらオレ、先生に殴りかかってるところだったよ…。マジさんきゅーな…。」
ばつが悪くて視線を足元に落として頭を掻く。
「ダメだよ平助君。そんなことしたら、ますます悪く言われちゃう…。名前さんも頑張ってるんだから、平助君も…。ね?」
そういってニッコリおれの顔を覗き込んで笑ってくれる。
その顔にドキッとして、今度は天井に視線を反らして頭を掻く。
くそっ。やっぱ千鶴には敵わねぇや!
「だなっ!オレのせいで母ちゃんが悪く言われるなんて許されねぇし情けねぇよな!オレ頑張るよ!ありがとな、千鶴!」
ニカっと笑って千鶴に手を振り、階段を駆け降りてグランドへ向かう。
食後のバスケしてスッキリしたら、午後からの授業頑張るぜ!