平助の母親
□3.
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☆★主人公の職場です。★☆
「原田さーん!近藤さまからお電話でーすっ!」
駐車場で新八と一服してると、ショールームからこの春採用されたアシスタントの苗字が駆けてきた。
「おぅっ!名前ちゃん、おつかれぃ!」
新八が調子よく片手を上げて応える。
「おつかれさまです、永倉さん!休憩中すいません、原田さん。近藤様からお電話入ってます」
そういって近くまで来て俺らを見上げる苗字。
「近藤さんからってことは、そろそろ車検の予約じゃねぇの?」
新八がタバコの灰をトントンと落としながら言う。
「そうだな。代車の手配かけねぇとな」
俺も最後に大きくタバコを吸うと、苗字の目付きが鋭くなった。
「永倉さん、タバコを吸うときはちゃんと携帯灰皿用意してください。原田さんも。
早くしないと近藤様、待ってますよ!」
早く早くと俺の背後にまわって背中を押す。
「わかった、わかったから」とポケットから携帯灰皿を取り出してタバコを消してしまう。
「もうっ!持ってるならちゃんとはじめから用意して一服してくださいっ!」
ぶんむくれて言う苗字の頭にぽんっと手を乗せて
「悪い悪ぃ。次からはそうするよ。汚れてたら新八に掃除させといてくれ」と言い残し俺はショールームへ走った。
「くぁ〜〜〜〜〜っ!なんだよ左之のやつ!名前ちゃんの頭にぽんっってよぉ!セクハラだぞチクショー!!」
地団駄踏んで憤っている永倉さん。
「チクショーって永倉さん、そっちですか…。もぉ…。ほら、永倉さんもちゃんとタバコ、マナーを守ってくださいよ?」
キッと背の高い永倉さんを睨み上げる。
すると「お…、おぅよ…」とたじろぎながらポケットから携帯灰皿を出してタバコをしまった。
「よろしいよろしい」
そういってニッコリ笑うと永倉さんもニカっと笑って
「名前ちゃんもすっかりここに慣れてきたな!」
と腕くみして腰を屈めて私の顔の高さに合わせて話はじめた。
「入ってちょっと経っちまったけど、ショールームと整備の奴らで名前ちゃんの歓迎会しようって思ってんだが…。名前ちゃんの都合、聞いてもいいか?それに合わせてみんなの都合つけるからよ」
ニコニコ顔の永倉さん。う〜ん…。
「?、名前ちゃん?」
「あの、歓迎会していただけるのはありがたいんですけど…」
「???」
「帰り、遅くなるのはちょっと…。なので、すいません!」
そういって頭をさげて辞退を申し出る。
すると永倉さんは私の両肩を掴んで
「えっ!?何でだっ!?名前ちゃん、結婚してないよな?彼氏か!?彼氏の束縛がキツいのか!?」
体を大きく前後に揺られ、永倉さんの息がかかる。
「ち、ちがいます!彼氏なんていません!そうじゃなくて…!」
「彼氏いない!マジか!?ヨッシャぁ〜〜〜〜〜!!!」
そういって片手は私の肩をつかんだまま、右手を拳にしてガッツポーズ。そしてまた私の肩に置く。
「じ、じゃあ、名前ちゃん………。俺と…」
近づく永倉さんの息に耐えられなくなって、
「んもぉ〜〜〜〜!近いっ!タバコ臭ぁい!」
気がついたら両手で永倉さんの胸を押しやっていた。
「臭いって…」
半べそ顔の永倉さん。
「だって、私タバコのにおい、ホント嫌いなんです。ダメなんです!」
わぁ〜〜〜〜!と言ってショールームに走って入っていくと、入り口で原田さんが笑って立っていた。
「おいおい。あんまり派手に振ってやんなって。見ろよ、あのうなだれよう」
親指を立ててさっきまで私と永倉さんがいた方向を指す。
そこには背を丸めて両腕をだらっと下げて項垂れる永倉さん。
いつも眩しいくらいに元気いっぱいの永倉さんが見る影もなくなって、ものすごく悪いことをしてしまったと罪悪感に襲われ、謝りに行こうと一歩踏み出そうとすると、
「禁煙してやる〜〜〜〜〜!!!!」
ガバッと上体を起こして両手を拳にしてをゴリラみたいに振り上げてものすごい勢いで整備工場の中に走って行ってしまった。
「……………。」
「……………。」
私も無言だったけど、原田さんも笑いを堪えながら無言で。
原田さんはまた私の頭にぽんっと手を置くと、
「俺も禁煙しようかな」
と言ってデスクに戻っていった。
「私も戻ろ…」
呟いて原田さんの後に続いた。
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