平助の母親
□40.
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☆★原田左之助という男★☆
「おい、どうした?顔色があんまりよくねぇみたいだが…。寒いか?」
パチパチと音を立てて燃える火を見つめていると不意に頭上から声をかけられ、我に返って顔をあげるとふわりと肩からブランケットに包まれた。
「…あ………、」
「みんな空見上げて星観てんのに…、お前は炎の番人か?」
私の横に座り首をかしげて上目使いの原田さん。
炎の灯りが端正な顔を照らしてできる陰影に、やっぱりよくできた顔だな〜と思ってしまう。
「ふふ、…炎の番人って!なんか強そう」
口元に手を当てて笑うと原田さんもフッと表情を和らげて、肩にかけてくれたブランケットに手を伸ばして両端を私の胸の前にしっかりと伸ばしてかけ直す。
「せっかく風呂入ったんだから湯冷めしないようにしなきゃな」
そう言って肩をポンポンと軽く叩く。
「あ、ありがとうございます…」
まるでお父さんが子供を労るような仕種に思わず「お父さんみたですね」なんて、ついポロっと言ってしまう。
「……おまえなぁ…。お父さんはねぇだろが…」
眉を寄せてはぁっと大きくため息をはいて項垂れる。
「す…、すいません…」
そ、そうだよね…、いくらなんでも年上の女に『お父さん』なんて言われたら落ち込むよね。
私、何言っちゃってるんだろ。
間髪入れずに慌てて謝ると後ろに両手を付いて夜空を見上げ
「ま、平助に『お父さん』なんて言われるのもちょっと違う気もするけどな」
意味深な事を言って私に視線を向ける。
「?」
よくわからなくて首をかしげて見ると、ハハっと笑ってまた空を仰ぐ。
「ま、平助とは友達感覚の付き合いの方が俺には合ってるかもな」
原田さんの言葉に私も星を見上げて平助を思い浮かべる。
「……、そうですね。あの子、原田さんのこと、すごく大好きみたいだったし、お兄さんみたいに思ってるんじゃないかな」
ピカピカ煌めく星の輝きはまるで平助が元気に楽しく過ごしているよって私に教えてくれているようで、なんだか安心して頬が弛む。
「兄貴か。そうだな、今度男同士でどこか連れてってやりてぇな」
そう言って星空を見上げる原田さんの横顔も目を細めて微笑みを浮かべていた。