平助の母親
□44.
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☆★気苦労絶えない土方先生★☆
ここ最近、中間テストの結果が良かったことと、バスケ部のインターハイ出場メンバーのベンチ入りに選出されたということで、やたら平助のテンションが高い。
朝練は一番に開始して、朝礼ギリギリに教室に入ってくる。
かと思えば、一時間目から居眠りこきやがる始末。
疲れがたまってるのかと思って見ていると、休み時間にはバッチリ目を覚ましてグラウンドに駆け出していく。
………、
あいつぁ、一体学校に何しに来てやがんだ!?
テストで好成績を上げた分、少しおとなしくしてりゃぁこうだ。
仏の顔も三度までとは言うが、生憎俺は仏の真逆、地獄の鬼教師だ。
俺の目に止まった以上、無事に帰れると思うなよヘースケ!!
そんなことを思いながら、剣道部も夏の全国選抜に向けて猛特訓で、俺も練習を外すことなく道場へ向かう毎日。
いつどうやって平助を絞ってやろうか考えながら道場の扉に手をかける。
「土方先生」
後ろからかけられた声に振り向くと、そこには久しぶりの顔ぶれ。
「お久し振りです。土方先生」
「斎藤!」
姿勢正しく頭を下げていたのは俺が初めて教師になって受け持った生徒の一人、斎藤一。
「僕もいますよ?土方さん」
「てめぇは…」
へらへら笑って両手をポケットに突っ込み腰を軽く屈めた猫背の男、沖田総司がいた。
「総司!土方先生だ!」
斎藤が総司に少し荒げた口調でたしなめるが、ヤツは更にへらへら笑って
「え〜?だって、もう僕らはとっくの昔に卒業してるんだよ?別にいいんじゃない?」
一くんはホント細かいんだから
と飄々とした態度だ。
なりは随分デカくなりやがったくせに、こういうところは昔から全然変わっちゃいねぇようだ。
こいつを見ていると教師としてのど初っぱなから散々な目に遭わされた記憶が沸々とよみがえってくるようで無性にイラッとするが、久々の対面だ。
ここは大人らしく落ち着こう…。
「どうした?珍しいじゃねえか。学校に何か用だったのか?」
「アレ?シカト?」
……、あぁシカトだよ。
総司のヤツはイチイチかまってるとろくでもねー事ばっかりだと昔の若かりし俺が警告するからここには存在しないものとして斎藤にだけ視線を向ける。
「はい。先ほど教採の願書を提出してきたところです。少し…、気持ちが昂ってしまい…、土方先生に会いに来てしまいました…」
そう言って頬を赤らめ俯く斎藤。
「そうか。いよいよ採用試験の時期が迫ってんだな」
斎藤の肩に手を置いて「お前なら大丈夫だ」と言ってやれば、
「一くんは昔っから土方さんに憧れてたもんね〜、よかったね、御墨付きじゃない」
総司がへらへらしながら俺が手を置いた反対側の肩に同じように手をおく。
「………。」
「………。」
相変わらずの総司はほっといて斎藤にだけ話しかける。
「こんなところで立ち話もなんだしな。久しぶりに見てけよ」
「はい、ありがとうございます」
「アレ?シカト?」
斎藤を促して道場の扉を開けた。