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□愛嬌
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「リョウガ〜、
恋人がいたとして、その人がほかの人たちにばっかり愛嬌振りまいてたとしたら、
普通ヤキモチ妬かない?」
僕の突然の質問に、ちょっと驚いた様子で、首をかしげながら答えるリョウガ。
「はい、妬くと思いますよ?」
「だよね?
じゃあ、それなのに妬かない恋人って何を考えてるのかな?」
Mの活動が始まって、初めこそ、憶えた言葉も忘れて正直不安だったけど、
いくつものインタビューや番組出演をするうちに、徐々に慣れてきて、その不安も段々薄れてきたところだった。
無理に中国語をたくさんしゃべろうと焦るよりも、
笑顔でたくさんの愛嬌を振りまくほうが喜んでもらえると分かって、
自分でも明らかに、前より肩の力が抜けたなと思う。
そのかわり、いろんな表情をしたり、いろんな仕草をする場面は増えて、
嫌ではないけれど、
やっぱりちょっと恥ずかしい。
愛嬌って、“私を好きになって”って意思表示みたいなものだから。
そんなのを自分以外にたくさん見せてたら、
恋人ならヤキモチ妬いて、不機嫌になったり、
「あんまりそんな姿見せないでください」
とか言ってきてもよさそうなものじゃない?
「…そうですね、えーっと、例えば、妬いてるけど妬いてないフリしてるとか?」
妬いてないフリ…かなぁ?
でも、みんなと一緒になって笑ってるし、
あんまりそういうフリには見えないんだけど…
「それか、ヤキモチ妬くほど好きじゃないとか」
う… リョウガ、
笑顔で痛いこと言うね…
じ、自信満々ってわけにはいかないけど、
け、けっこう好かれてるとは思うよ…
…たぶん…
「あとは、妬いてもキリがないって諦めてる、とかですかね?」
そうなのかな?
確かに、こういう仕事だから、そう思うこともあるけど…
でもさ…
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