短編

□私だけのあなた
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私だけのあなた



「ジョンヒョンさーん、ちょっと目線くださいよー」
「んー」

気のない返事と共に私の持つカメラに向けられる視線
さっきから私の予備の一眼レフカメラをいじくる彼は、只今撮影休憩中のジョンヒョン

SHINee専属カメラマンのアシスタントをしている私にやっと与えられた彼らを撮影する初めてのお仕事
それが撮影中の彼らのオフショットを撮影する事だった
いつも機材のセッティングやらライティングやら、師匠にくっついて彼らの撮影をずっと見続けてきた
仕事でカメラを握る事等殆ど無かった私にやっと訪れた大きなお仕事なのだ

「一応オフショットとは言っても、そこまで間の抜けたような顔しないでよ」
「ヲヲヲ」

カッコつければカッコイイのに・・・
普段の彼はコロコロ表情の変わるでっかいワンコみたいで、
いたずらっ子のように笑いながら私にカメラを向けてくる
うーん、やっぱりオフショットとは言ってもなんだか今日はいつもと違うんだよなぁ
私が撮りたいのはもっとこう普段見ている表情で・・・
うまく言えないんだけどやっぱりなにか違う気がする

「撮りますよー」
「撮るよー」

撮っているのはこっちなんだけどな・・・

私の言葉をオウム返しにケタケタと笑いながら私に向かってシャッターをきる
その姿は本職の私なんかよりとてもさまになっていてなんだか悔しい
まぁ、これはこれで可愛いからいいか
私は彼に向かってシャッターをきる

他のメンバーといえばオンユ、キー、テミンはセットで絶賛本番撮影中
ミノは衣装を着替えに行っている
撮影スタジオのセット脇に備え付けられた待機用のソファに座るのはジョンヒョン一人だけだった

「テミナー!!キボムー!ヒョンー!」

ジョンヒョンはフィルムチェンジの合間を見計らいセットでポーズを決めるメンバーに手を振りカメラを向ける
あ!私も!!こういうところ撮らなきゃ・・・

「カッコよく撮れたー?」
「バッチシ!!さすが俺」

茶化すキーに、グッと親指を突き立てている
ファインダー越しに覗いても彼らはやっぱりキラキラしていて
眩しくて、光り輝くSHINeeの名は本当にピッタリの言葉だと思う
そんな彼らを見ていると自然と表情がほころんでくる

「いただき!!」

するとジョンヒョンが私にカメラを向けシャッターをきる

「ちょっと!ジョンヒョン!?」
「うん!超カワイイ!!」

撮った画像を確認しながら満足そうに笑う

「ヌナさぁ、もっと力抜いたら?」

その方が可愛いよ?と、くるりと私に向き直ったジョンヒョンが愛おしそうににっこり微笑む
さっきまで違和感を感じていた作り笑いとは違う自然な笑顔

「ちょ、今の!もう一回!!お願いします!」

それだよそれ!!私が撮りたかった表情は!
時々見せてくれる君の本当の笑顔
しかしジョンヒョンは

「やーだよー!」

そう言ってさっきのように笑ってはくれなくて

「なんでよーケチー」

そんな風に責めても効果はなくて

「一番好きな表情なんだけどなぁ・・・」

自分のタイミングの悪さに、残念過ぎてにポツリと呟いてしまう

「ヌナがもっと笑ってくれたらいいんだけどね〜」
「私は関係ないでしょ」

そんな事を行ってくるジョンヒョンに半ば呆れる
笑ってくれなきゃいけないのは彼の方なのに

「関係あるの!」

?マークが浮かんでいる私に悪態をつくジョンヒョン

「早く気づけ!このパボ!!」

そう言って私のおデコにチョップをするフリをする

「ちょ!パボとはなによー」

ジョンヒョンの攻撃を避けるように顔を逸らした瞬間



チュッ



「あ、その表情もいいね」

そう言ってさっきのようにほほ笑みかけてくるジョンヒョン


は?

今のって・・・キス・・・?

なんで?

あれ?

でも


「今の・・・」
「ん?」

「今の表情!!もう一回下さい!!」

私がカメラを構えて発した言葉に
困ったような、それでも私の大好きなキラキラした笑顔になった

「このパーボ!!」



私だけに見せるあなたの表情を
もう一度見せて・・・



END

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