社会人パラレル
□1ーD
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ピピピピピ…
「うぅ」
聞き慣れた携帯電話のアラーム音。
毎朝決まった時間に鳴るように設定してあるから、今は朝の7時だ。
頭が痛い。
携帯のアラームを切るべく身体を起こしバッグを探りながらもビビはクタリと頭を垂れる。
これは完全に二日酔いだ。
目当ての携帯をようやく見つけ、緩慢な動きでスヌーズ設定を解除し、再度バッグに放り込む。
若干目が霞んでいる気がして、両手で顔を覆い眼球を押さえた。
指に当たる感触でマスカラをしたまま寝ていたことに気付き、次いで昨夜ゾロ宅で寝てしまったことを思い出した。
ひとつ思い出せば、凶行の数々が嫌でも頭に浮かんでくる。
しばらく身の縮むような恐ろしい回想をしていたビビは、ガバリと再び上半身を起こし部屋を見回した。
ベッドのすぐ脇、フローリングでダウンジャケットを適当に被り腕を枕に寝ているゾロを見付けホッとする。
何となく、居なくなっていたらどうしよう、と思ってしまったのだ。
ここはゾロの部屋なんだからそんなことないに決まっているんだけど。
先ほどまで自分が使わせてもらっていた布団を、そっとゾロに掛ける。
そのままゾロの顔の横にぺタリと座り込んでその寝顔を見詰めた。
目を閉じている顔は存外幼く見える。
昨日話をした感じでは30歳前後という印象だったが、自分とそう変わらないのかもしれない。
やっぱり、好きかも
ぼんやりとそう思ってから、いやいやと首を振る。
昨日どれだけ迷惑をかけたと思っているのか。
この上、図々しくもまた会いたいなんて言えるわけがない。
「よし」
このままでは10分でも20分でもこの寝顔を見詰めていたくなってしまいそうだったので、わざと声に出して気合いを入れた。
無理に膝に力を入れて立ち上がる。
二日酔いで頭は痛いし、昨夜風呂に入っていないせいで髪がペタペタするけれど、不思議と気分は悪くない。
それはあのやけ酒と、ゾロの存在のお陰だとわかっている。