社会人パラレル

□1ーB
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ゾロが風呂を済ませビール片手にリビングのドアを開けると、女がフローリングに正座をしてゾロを迎えていた。
まだ寝ていると思い込んでいた女が決死の形相でこちらを見上げていることに驚き、迂闊にも部屋に入ろうと踏み出していた足を止めてしまった。

「…起き「ごめんなさい!」」

状況はわからないもののとりあえず声を掛けてみようとしたところで、派手に遮られた。

「あの!私、もの凄く酔っ払ってて、どうやってここに来たかも覚えていないの!私から誘っておいて本当に申し訳ないんだけど、そんなつもりじゃなかったの!…いえ、その時はそのつもりだったんだろうけど、何て言うか…とにかかくごめんなさい!!無理です!!!」
「……はあ?」

女のあまりに前のめりな姿勢に、謝られているはずなのに拒否されている気分になる。
…いや、拒否されているのか?

ゾロは女の言うことが全く腑に落ちなくて眉間に皺を寄せた。
その顔がよほど恐ろしかったのか女がビクリと身体を震わせたが、それでもゾロを凝視したまま座っている。
こちらの出方を窺っているように感じて、ゾロは溜め息を吐きつつ女から一旦目線を外した。

髪から滴り落ちてきていた水を首にかけていたタオルで拭い、ビールを半分ほど一気に喉へ流し込む。
このわけのわからない状況でこれ以上女に萎縮されるのはよろしくないので、リビングのドアは開け放したまま部屋に入りローテーブルを挟んで女の向かいに胡座をかいた。
それから漸く女の視線を真正面から受け止める。

「お前、俺のこと誘ってたのか?」

まず先ほどの台詞で1番気になったことを聞いてみた。
女の目が丸くなる。
でけえ目だな、と感心した。

「…じゃあ私、どうしてここに」
「まあ覚えてねえのも無理ねえけど」

誘うにしては斬新すぎるやり方だよなあ、とゾロは大げさに呆れ声を出した。

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