未来捏造
□2-ビビ+コーザA
1ページ/3ページ
それからしばらく、ビビは今まで1人で秘めてきた想いをポツポツとコーザに話した。
ひとつずつ、自分が知っているゾロを言葉にしていく。
酒焼けなのかいつも少し掠れた声だった、とか。
サンジと殴り合いのケンカをした後の昼寝では必ず歯軋りをしていた、とか。
短く刈ってあるからわかりにくいけれど髪に少し癖があった、とか。
ゾロのことをこんな風に話すのは初めてで、ビビは驚く。
好きな男の話をするのがこんなにも嬉しくて楽しいなんて知らなかった。
そのくせこんなにも後味が苦いなんて、知らなかった。
口から出たはずの言葉達が、しんしんと自分の中に積もっていく。
静かに、でも息ができないくらいにみっちりと、胸の中がゾロへの想いで埋め尽くされていく。
そのせいで、ビビは、だんだんと言葉が少なくなり最後には黙ってしまった。
すると。
「泣き言も聞いてやるよ」
普段、強い言葉を強い口調で言う傾向のあるコーザが。
聞いたことのないような声音で優しく言ってくれるから。
見たこともないような優しい顔で覗き込んでくるから。
「泣き言なんて…」
ビビは苦笑いで誤魔化そうとして、失敗してしまった。
できそこないの笑みを頬に張り付けたまま、とっさにはそれ以上言葉を続けられなくて溜め息を吐く。
自分には現状を嘆く資格などないくせに何を言おうとしているのか。
コーザから目線を逸らすと空を仰いだ。
あの時。
彼が全ての判断を任せてくれたのをいいことに、何も告げずに一方的に、何もかも終わらせてしまったのは自分だ。
共に行くことを拒み、先を約束するわけでもなく、かといって決別の意を示したわけでもない。
意外と筆マメなナミやウソップとの手紙のやり取りに彼へのメッセージを紛れ混ませるくらい、容易いことなのに。
何もなかったかのように知らん振りをした。
まるで行きずりの恋みたいに。
綺麗なまま、終わらせてしまった。
彼がそんなのを望んでいないことを承知で。
だから。
自分には現状を嘆く資格などないのに。
それなのに。
コーザの優しい言葉に普段隠している弱い部分が顔を出してしまった。
ビビは迷って迷って、結局、夕焼けに燃えた空を見上げたまま、零した。